楽天が電子図書館事業に進出!電子書籍は無料? 3月19日に図書館事業や出版業界に激震が走りました。電子図書館サービスを提供する世界最大手OverDrive社を約500億円で買収し、楽天が電子図書館事業に進出すると発表したからです。これは、アマゾンがキンドルで日本の電子書籍に参入して以来の最大のニュースです。
電子図書館に関わる事業は、ここ1年間に急速に展開していました。この楽天の買収により、電子図書館が広まる展開が一気に加速することになりました。しかしこれは、ユーザー側にとってはどんなメリットの有るのでしょう。楽天の電子図書館事業進出で電子書籍は無料となるのでしょうか?
通常の図書館は、基本的には書籍を無料で借りることのできる施設のことです。しかし、これはほとんどの場合には、紙の本のことを指します。電子図書館の登場により、紙ではない書籍、電子書籍も図書館で貸し出してくれることになったのです。
この電子図書館は本当に読書好きにとって良い知らせなのでしょうか?また、現在急速に増えつつある自己出版の著者にとってはどうなのでしょう?この2つの視点から、今回は速攻で考えてみたいと思います。
目次
そもそも電子図書館とは一体何なのでしょうか?まずは、アメリカや海外先進諸国の事情から探ってくたいと思います。
Wikipediaによれば、「電子図書館(でんしとしょかん、e-library)とは、現代のIT(情報技術)化によるコンピュータ・データベースを利用した新たなウェブサイトによる図書館である。」と定義されています。
つまり、これまで貸し出しの対象であった紙の本をウェブ上で電子書籍をデジタルで貸し出すというものです。海外の事例を見ると、公共や学校の図書館などにクラウドサービスを提供する業者を介して提供されているのが実情です。
この電子図書館サービス提供業者の世界最大手のOverDriveは、米国で1万8000館、45カ国58言語で3万館以上に導入されている電子図書館サービスを展開しています。ここに、全世界5,000以上の出版社や著作者から預かっている100万タイトルを超える膨大なデジタルコンテンツを提供しています。(出典:OverDriveの電子図書館サービス導入第1号が示した「7つの教訓」)
では、日本では電子図書館はどうなのでしょう?ここ1年半ほどの進展を時系列で見てみましょう。
では、われわれ読者にとって、これは何を意味するのでしょうか?
電子図書館が日本津々浦々の公共図書館に採用されていけば、地元の図書館に登録することで、数多くの電子書籍を無料で借りられるようになります。
具体的に一度に読める本の数、貸し出しや返却の方法はどうなのでしょう?
アメリカの事例では、ほとんどの図書館がこのOverDrive社のサービスを使って電子書籍の貸出を行っています。貸出期間は図書館にもより異なりますが、基本的には紙の本と同じように一定期間が終了すると引き続き読むことはできません。貸出期間が終了すると、もう一度貸し出しの手続きをするかオンラインストアで購入しないと読むことはできません。
本を借りるには、地域の図書館のホームページにアクセスし、通常の図書カードに加えてオンライン貸し出しの手続きが必要です。一度に借りられる本の数は、紙の本と同じように限られています。
つまり、読者にとってのメリットは次のようにまとめることができます。
もちろん、電子図書館は万能ではありません。読者にとってのデメリットとして考えられるのは次のとおりです。
では、この電子図書館は個人の著者にとってはどうなのでしょう?わずかな著作権料で電子図書館からもらうだけで、沢山の図書館利用者に無料で貸し出すわけですから、電子書籍のオンラインストアでの販売数が激減するように思えます。
これについては、OverDrive社が興味深いデータを公表しています。OverDrive社が展開する海外の電子図書館の経験では、貸し出された電子書籍の4割は返却後購入に結びついている(引用:OverDriveの電子図書館サービス導入第1号が示した「7つの教訓」)ということです。
基本的に、デジタルである電子書籍は追加コスト無しで貸し出すことができます。つまり、貸し出しの数が増えれば増えるほど、本の売上も増えるということです。これは、出版社にとっても著者にとっても大きなメリットとなります。
書籍が紙の本のように電子図書館のクラウドシステムから無料で借りられれば、これは読者にとってとても出版・著者側にとっても非常に大きなメリットがあります。
今や、スマホは1人に1台の時代です。図書館からオンラインで借りて、スマホやタブレット端末でいつでもどこでも読書をする時代がすぐそこまで来ています。電子書籍は、すでに黎明期から拡大期への第2の段階に入ったと言えるのでしょう。
最後にひとこと。いかがでしたか?楽天の世界最大の電子図書館事業サービス提供会社のOverDrive社買収により、日本の電子図書館は急速に広まりそうです。これは、読者、出版社、著者のすべての関係者にとって大きなメリットがありそうです。
もちろん、外資によるサービスの日本参入や図書館の追加コストなど議論もありそうです。あなたはどう思いますか?是非、あなたのご意見を下のコメント欄に残してご自分の存在を示して下さい。
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紙の本はなかなか返却しない人が居るだけで、何ヶ月も待たされるということがあります。特に話題の本ではないのに、シリーズ物の一冊がどうしても読めないとかなりストレスになります。
それが解消されるならば、本当に嬉しい事ですね。
ただし、作家さんたちの中には図書館が作家の生活を脅かしているという主張をする人もいますので、さらに便利になるということは作家にとって良い環境になるのかというのが心配なところです。
良い作品がなくなってしまったら残念ですよね。
せっかく電子化するのですから、図書館事業や著者に全額とは言わずとも払いたいという場合などにも対応出来るようになると、さらに良書が生まれる土壌となるのではないかと思います。
月定額の読み放題などを展開している出版社もありますし、適正な有料価格の有料図書館で、多くの出版社を網羅できるのであれば、かなり利用者が出ると思います。
Kindleはスマートフォンアプリの使い勝手の悪さなど、日本独自のマーケティングに乗り遅れている感がありますので、パイオニアとして頑張りを期待しています。
現在、楽天は買収の採集調査の手続きに入っています。4月中にはすべての買収の手続を完了する予定とのことです。これは、既にOverDrive社と日本の取次のメディアドゥは提携関係を結んで着々と準備を薦めている真っ最中での「寝耳に水」的な出来事でした。電子書籍事業では、規模でまさるAmazonが常に先行してきたわけですが、これで楽天が一矢を報いたという事になりそうです。
これでAmazonが電子書籍事業では圧倒的な不利な立場に置かれます。しかしなぜ、Amazonはずっと以前にOverDrive社を買収しなかったのか?このへんは謎ですが、後から推測も含めてまとめてみたいと思います。