電子書籍はなぜ読みづらいのか?: 最近、電子書籍を読む機会が増えています。しかし、多くの人が電子書籍は読みづらいと感じています。
電子書籍はなぜ読みづらいのでしょうか。それを解消する方法とは。そして、それを解消した先には一体何があるのでしょう?この記事では、詳細な分析とアプローチを提案します。
目次
最近、Amazonや楽天などを始めとしたオンライン書店では、紙の本と電子書籍から選択できるようになりました。
紙の本よりも割安価格ですぐに読めるという便利さから試してみます。電子書籍は、スマホやタブレット端末でも、電子書籍リーダーアプリをインストールし、購入した電子書籍をすぐに読み始めることができます。
また、パソコンから読むこともできます。もちろん、専用の電子書籍リーダーであれば、E-inkと呼ばれる印刷と同じ技術を使った紙と同じような画面読みやすい画面で読むこともできます。
電子辞書も無料で提供され、それ以外の読書に使える便利な機能がついてきます。価格も、ほぼ間違いなく紙の本よりも安く設定されています。何には、紙の本の半額や、キャンペーンで無料というものさえあります。
一見、電子書籍のほうが良さそうに感じます。しかし、「電子書籍は読みづらい」という第一印象を受けるため、その後は敬遠する人が少なくありません。
なぜ、電子書籍は読みづらいと感じるのでしょうか?
これを考えるためには、「本を読む」とは何を意味するかから考える必要があります。
私達にとって、「本を読む」とは一般的には「読書」を意味します。そして、読書という言葉は次のようなものをイメージさせます。
読書から連想されるイメージ
そこには、とてもプライベートな時間で、一人で静かに本の中のストーリーや知識の世界にどっぷりと浸る幸福なひとときがあります。
しかしよく考えてみると、そこに到達するために必要な3つの前提要素の中で、「何を」と「どう」は、スマホやタブレットなどの画面では、もともと実現不可能です。
具体的には、
「電子書籍は読みづらい」というその理由には、紙の本と電子書籍の読書の間に、埋めることのできない大きなギャップが根本的に存在するからです。
これは、よく考えてみると納得がいきます。
私たちは、子供のころに母親や幼稚園の先生に読んでもらった絵本に始まって、学校の教科書、受験用の参考書、仕事のマニュアルにいたるまで、文字や画像を紙に印刷して綴じたものを本として読み親しんできました。
そこには、長年の「紙の本の読書」の嬉しい体験と紙の本が記憶の中に結びついているのです。また同時に、潜在的には、電子書籍が増えれば書店や紙の本が消えていく恐れがあると感じていないでしょうか。
ですから、電子書籍をスマホやタブレットなどで開いたときに紙の本と同じ体験を求め、それを再現できないことに不満を感じているわけです。
しかし、この電子化された本「電子書籍」が意味する範囲を少し広げ、見方を少し変えると違った景色が見えてきます。
先ほど、読書を「本を読む」と定義しました。
これはを「出版物を読む」と拡大解釈してみたらどうでしょう。
出版物には、本(書籍)に加えて「雑誌」と「新聞」が含まれます。この出版物ですが、活字離れが叫ばれて久しく、その間、一貫して出版部数が減少傾向にあります。「売り上げも書店数も減少続く 「出版不況」の現状は?」
しかしその一方で、「「活字離れ」論に最終決着?–電子書籍を含めれば「不読率」は激減している」では電子書籍を含めると読書の時間が増えているとしています。
また最近、通勤電車の中で雑誌や新聞を読む人がいなくなりました。あなたが最後に雑誌を買ったのはいつですか?また、新聞を引き続き定期購読していますか?朝の廃品回収の山には新聞や雑誌の束をほとんど見ることはなくなりました。
私たちはインターネットの登場以降、紙の本や雑誌・新聞紙ではなく、ヤフーやグノシーで流し読みしています。また、必要な情報があれば、グーグル検索すれば大抵の答えを見つけることができます。
ここ数年で、スマホがほぼ全世代に行き渡るようになりました。また、タブレット端末やタブレットPCで仕事をする機会も増え、デバイスの画面上で文章を読むことが当然になってきています。
つまり、画面に文章を読むという新しい習慣が生まれつつあるのです。
本は出版物の一つですから、画面で読み親しまれても不思議ではありません。しかし、冒頭にリストアップしたような理由により、実際にはそうではありません。
もちろん、本はブログ記事や雑誌記事とは違います。作家が出版社の編集者と長い時間をかけて作り上げた創作物です。
最近は個人でも簡単に出版できるようになったとはいえ、そこには単なる記事や文章ではない、著者の知識や知恵、独自の経験など、本ならではのコンテンツに期待される要素が注ぎ込まれています。
しかし、本が雑誌や新聞と違うのは、読書術をはじめ、電子書籍を効果的・効率的に読む方法については未だ多くが語られていないからではないでしょうか。
電子書籍を読むためのリーダーアプリや端末も、未だに発展途上です。まだまだ改善の余地があるに違いありません。
このため、最初の何冊かを試して、読みづらいと決めつけてしまうのです。
では、一体どうしたら良いのでしょう?
電子書籍を快適で楽しく読むには、紙の本の読書と電子書籍の読書を別物として捉え、別のアプローチを取ることが必要です。
その第一として、紙の本と電子書籍の長所と短所をそれぞれよく理解することが出発点です。
紙に書かれた文章の特徴と長所は、これまでの読む習慣に合っている点です。これは、物理的に手にとって、1冊の中をページやコンテンツの特定の箇所を感覚的に特定しやすいことがあげられます。
また、手でペンを持ってフリーハンドの書き込みができることも大きいメリットです。紙に書かれた文字や図表はイメージ化しやすく、脳の記憶に残りやすいという研究もあります。(Readers absorb less on Kindles than on paper, study finds)
一方で、紙であるがゆえの欠点は少なくありません。
まず第一に、現代の情報処理の必須要素の「検索」が全くできないという致命的な欠陥があげられます。すべての情報がデジタル化され処理されている現代の世界にありながら、紙の本に書かれた文字は処理することはできません。
また、物理的に、場所をとる点も大きなデメリットです。大量の情報を紙の本で記録・管理しようとすれば巨大な図書館や施設が必要となってしまいます。
一般的な個人にとって、書斎や居間に置ける本棚程度しか確保できません。この本の場所を確保するという点は、多くの読書家や作家にとっての大問題でした。日本の住宅事情では特に床が抜けるほどの大変なことだったからです。
この紙の本の知識を使っていかに生産性をあげるかというのは、とても大きな研究対象でした。知的生産の技術 (岩波新書)
このように、クラウド上を大量のデータが超高速に行き交う中、紙の本だけが取り残されているのが現状です。
書籍のデータベースはすでに存在すると反論があるかもしれません。しかし、これまでの本のデータベースでは、基本的に本のタイトル、著者、出版社、発行年月日などの奥付け情報や簡単な要旨などの書誌しか扱えないのです。本の全文検索やテキストのコピーは、出版社が設定した著作権の制約によりできないのです。
インターネットの登場以降の急速なデジタル化では、クラウド上でデータを管理することが前提として進んでいます。傾向としては、多くの企業が紙の文書での記録や企業情報の処理を減らそうと努力しています。
紙の本が読みづらいのは、紙の本を前提として電子書籍を読むから。電子書籍を読んで最大の効果を楽しく快適に引き出すには、電子書籍を読むアプローチが必要です。
では、電子書籍の読書とは一体何を意味するのでしょうか?先ほどの場面設定で考えてみます。
この「どう: ?」に当たる部分が新しい電子書籍のための読書のアプローチです。
この点については、今後、多くの議論が交わされ、また多くの機能やアプリケーションが登場し電子書籍の読書術というものが登場してくると考えられます。
この点に関しては、「デジタル読書のフレームワークとは? 「デジタル読書の技法−アナログ人間が飛躍する知識術」」で紙の本と電子書籍を両立させながら知識を活用する方法について詳しく説明しています。
現在でも、多くの読書機能やクラウドアプリケーションが提供されています。こちらは、「電子書籍の読書術: あなたの読書が驚くほど加速する厳選7冊とは?」で詳しく解説しています。
私自身の体験としては、先ほどの知的生産の技術 (岩波新書)
のどちらもKindleで購入できるようになる前に紙の本で何度も読んだ経験があります。
その際には、付箋やアンダーラインの書き込みで重要な箇所に書き込んでから、読書ノートを作成しました。どちらもパソコンで読書ノートに書きだすのに3時間から4時間程度を費やしました。
この作業は、Kindleのハイライトとメモという読書機能を使えば、読書をしながら電子書籍に直接書き込みができるので、読み終わったときにはKindleのクラウドにデータとして全て記録されています。
これを使って、本のコンテンツの特定の場所を検索するのも、引用して使うのも、自分のメモを追加して編集するもの簡単にできるのです。
電子書籍のオンラインウトアを持つGoogle、Amazon、Appleは、全てAIに多額の資金を投じて最先端の技術を競争しています。
注目すべきは、これらの企業は全て書籍のコンテンツをデータベースに持っていることです。もちろんこれは、先ほどの書誌のデータベースではなく、全文のデータベースです。
この電子書籍のオンラインストアのコンテンツデータは、これら企業のAIで全て分析されています。たとえば、全てのテキストデータ、レビューのコメント、日々の売上のデータ、著者や出版社等はビックデータとしてAIがパターン認識からディープ分析できるのです。
最近、囲碁の世界的なプロがGoogleのAIソフトに敗れるというショッキングなニュースが話題をさらいました。人工知能の能力は人間の能力を超えつつあります。これは、読書についても同じです。
たとえば、Googleは世界中の1億3000万冊の本をデジタル化し検索可能にすると表明しました。(Google: 129 Million Different Books Have Been Published)これを2020年までに完了する予定で、2015年10月には 2500万冊のデジタル化を終了しています。(Google Books: A Complex and Controversial Experiment, International Arts)
検索結果には、Googleブックスのタイトルが表示され、すぐに購入できるようになります。実際に日本語の書籍にもこの検索は開始されていて、すでに、Googleブックス(読書におすすめのアプリとサービス: 厳選35 – 電子書籍と本の読書を別次元に進化させる方法 – 31、Google検索とGoogle Playブックス)で検索可能の本が増加中です。
現在のところ、世界最大のAmazonや他の出版社で販売している電子書籍はこの検索の対象になっていませんが、これは急速に変化していくものと考えられます。特にAmazonでは、Echoと呼ばれるデバイスでAIパーソナルアシスタントのAlexaが女性の声でショッピングのアシスタントをしてくれます。
今後、読書のパーソナルアシスタントが登場し、読みたい本の検索はもちろん、主人に替わって読書をすることも考えられます。
そのときには、何万冊いとう中から全文検索をして、自分が探している本や特定の知識を探すだけでなく、読書ノートをつくったり、研究結果を読み上げてくれるのかもしれません。
これらは、紙の本の読書に限定していたら、到底考えられない世界です。
もちろん、デバイスの画面から完全に離れ、紙の本だからこその読書を楽しみたいというニーズは今後も無くなることはないでしょう。
回転するLPレコードをダイヤモンド針で聴く音はデジタル化された音源にはない良さがあると言います。これからも新聞は引き続き読まれるでしょうし、コンビニで雑誌を立ち読みもできます。
しかし、読書の本流は間違いなく新しいステージへと移行しつつあると思うのです。
あなたは、この記事を読んでどのような感想をお持ちですか?あなたにとって、Kindleとはどんな存在ですか?
ぜひ、あなたのコメントを下のコメント欄からお知らせください。
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コメントを表示
考察が奥深く納得いくもので、読んでて共感できた。
Zenさま、素晴らしいコメントありがとうございます。これからも宜しくお願いします。大山