3倍速文章術: 考えるスピードでアウトプットする
今、知的ワーカーに求められるのはアウトプットの質と価値です。しかも、それを高速に次々と出し続けていく必要があります。この記事では、考えるスピードでアウトプットする、3倍速文章術を解説します。
目次
私を含めて、多くの人が特に知的ワーカーと呼ばれるような人達は、毎日締め切りに追われています。
常に何らかのアウトプットをすることが前提で動いているわけですね。
そこには新しいひらめきや気づき、アイデアが求められています。
要求されるのは付加価値であり、何らかの問題解決であり、新規性というか目新しいこと、そして何か驚くようなブレークスルーをもたらすようなものというものが、常に要求され、求められています。
ここから、3倍速文章術を詳しく見ていきます。
そんな中、一冊の本をご紹介したいと思います。非常に古い本です。
1940年に書かれた「アイデアのつくり方」という本で、著者はジェームズ・W・ヤングという大手広告代理店のトップだった人です。
今でも、大手広告代理店の新入社員の社内教育に必ず用いられているほどの、バイブルのような存在となっています。
この本に、東京大学の人文科学の教授であった竹内均教授が解説を寄せています。この方は、昔はテレビに出ておられた方で、すでにお亡くなりました。
面白いのは、この本のヤング氏のコンテンツは62ページほどの非常に短い本なのですが、竹内教授の解説がそれと同じくらいの量になっていることです。
彼いわく広告業界と自然科学といった全く違った方面でのアイデアのつくり方がこれほどぴったりと一致すると驚いたと言っています。
これによく似たものに、梅棹忠夫さんが書かれた「知的生産の技術」があります。京都大学の人類科学者ですが、この方のアプローチとも非常によく似ています。
ジェームズ・ヤングは、アイデアの作り方の原理を次の2つだと言っています。
原理1: アイデアとは既存の知識の組み合わせ以外の何物でもない。
原理2: 既存の要素を1つの新しい組み合わせに導く才能は、事物の関連性を見つけ出す才能に依存する
そして、アイデアを作る手順として、5つのステップを挙げています。
ステップ1は情報を収集する。そして、これを特殊資料と一般資料に分けると言っています。
2番目に集めた情報に処理し、理解を深めるステップ3として情報の組み合わせを考える。
ステップ4として、新しい組み合わせからアイデアを発見していく。
そして最後のステップ5としてアイデアの検証と具体化と言っています。
ジェームズヤングは、これを情報カードを使って知識を書き込むことによって蓄積していきます。これを日頃から調査をしたり、読書をしたりして、どんどんとためて整理していきます。
これがある程度蓄積したところで、はじめて新しいアイデアを生み出していくことが可能になっていくというふうに言っています。
情報カードというのは、7.5cmX12.5cmほどの小さな横線の入ったカードで、170文字ぐらい書くことができます。
「知的生産の技術」で有名な梅棹忠夫氏は京大式カードというのを発明されましたが、これはB5版18.2×25.7センチで、850文字程度を書き込むことができます。
どちらも非常に面白い分量ですよね。
170文字というのは、Twitterのツイートより少し多いぐらいです。
また、この京大式カードの850文字というのは、いろんな物事を要約して一つの理解できる、要約された文章くらいです。あるいは短いブログの記事と言ったぐらいの長さでしょうか。
こういった単位のものが知識の断片としてカードとしてどんどんどんどん蓄積されていく。
それをインデックスなどをつけて、日付けや分類などで仕分の作業をしていくわけですね。
しかし、これは今のデジタル化の時代には、知識管理の自動化が可能ですし、そうしていかなければいけません。
これを1貫したプロセスで扱ってその知識を圧縮し、要約し知識ベースとして蓄積をしていくのです。
そして、集められてきたこの知識の断片からアイデアを作る。
この考え方では、ここでは、それぞれの情報カードですけれども、これを知識の断片、LEGOのパーツのように組み合わせていく。並べかえていく。そこからアイデアをつくっていく、ということですね。
これが、将来にわたって自分の知的な財産となる。膨大な量の知識のデータベース、ナレッジベースとなって自分を助けてくれます。
そして、これを必要なときに、必要な場所に集めてきます。それを並べかえたり、あるいは何かアウトプットに使っていく。
そこから、多種多様なアイデアをつくることに使っていくということになります。
ここから3倍速文章術の方法が見えてきます。
「知的生産の技術」とセカンドブレイン: 日米比較から考えるデジタル化する知的生産の進化論(新しいブラウザータブで開く)
情報カードや京大式カードは、紙の文字の時代の遺産、レガシーです。今さら、これを一から作る必要は全くありません。
DX、デジタル化が急速に進む今、これはEvernote、あるいはNotionを使うことによって、非常に高速化、自動化することができるようになっていきます。
EvernoteやNotionなどの知識管理ツールをうまく活用することの利点は、単に自働化や高速化だけではありません。
前回のエピソードで、「大量の知識を集めれば、答えに近づく、発見がある」と考えて、情報方シンドロームにおちいり「ホワイトアウト現象」となってしまったというお話をしました。
こういったツールを使いこなすことにより、自分の頭の中を整理して、脳をクリアに維持していくことができます。
「読んだら忘れてよい読書」のエピソードでは、「記憶に残る読書術」のセクションで、樺沢氏は次のように言っています。
「読書してから7日から10日以内に3回から4回アウトプットをすると記憶に残る。これが脳科学の研究から結論づけられる。」
樺沢氏はこのプロセスを、脳の海馬という部分に一時保存された記憶に付箋がつけられて、記憶の金庫というべき側頭葉に長期保存される、と表現しています。
しかし、問題は情報過多によるオーバーロードです。樺沢氏のアプローチは、一冊の本の時は正しいのですが、大量の読書を続けていくうちに破綻してしまうところです。
つまり、ホワイトアウト現象の原因となってしまう。
これを知識ベースのツールを使うことで回避しながら、いつでも取り出して脳の活動を補強しながら、仕事に使っていく。
問題は、「読んでも忘れない」ではなく、キモとなるのは、読んだらいったん外部脳に預けて、いつでもどこからでも、それを引き出して反復できるようにしておくことです。
自分が意識をしているところの短期記憶と無意識で動くところの長期記憶のところですね。
外部脳に引き出しを作っておいて、それをいったんは避難場所として使う。そして、必要な時に、必要なだけの知識を取り出せるようにしておく。
そして、長期記憶から情報を引き出してきて、短期記憶の領域で並べかえたり考えたりということを行っていく。
つまり、人の短期と長期の記憶、そして究極的には深層意識と並列に動かしていくことができるようになります。
こういった思考のワークプレースというものを、画面の目の前でも、あるいは記憶の中でも自由に動かしていくことができるようになっていきます。
これは、「自分の潜在意識から顕在意識のところに必要な時に必要な知識を引き出して創造的な活動をする」ということでもあります。
この外部の外側に貯めておいた知識ベースがあれば、いつでも可能になります。自分の知識をを見える化して、目の前で動かしていくことが可能になるのです。
紙の本と電子書籍: 本当に紙の本で読書する方がよいのか?(新しいブラウザータブで開く)
さて、ここで大きな障害に突き当たります。
これですが、以前ジェームズヤングやあるいは竹内彬教授がやっていた情報カード、あるいは京大式カードのようなものを使うとなると、膨大な作業が必要です。
どちらの方も専任のアシスタントを抱えていました。
大学の教授ですから、予算もが与えられて、それくらいの余裕はあるわけです。例えば、梅棹氏の場合は、京都大学に研究室をお持ちでした。そこでアシスタントとして働いていた藤本ますみ氏の「知的生産者たちの現場」はとても興味深いものです。
しかし、今、私たちにはそんな余裕などほとんどないですし、よほどの大企業の管理職以上でもなければアシスタントがつくということはなかなか考えづらいです。
一方で、全ての仕事や思考のデジタル化が急速に進む中、知識管理ツールとして使えるEvernoteやNotionなどを使えば、ほぼ自動化したプロセスを組み、自動的に知識を圧縮しながら蓄積していくことができす。
私自身、こう言ったツールを使い始めて驚くことがあります。それは、アウトプットの部分です。ヤング氏のアイデアの作り方の3から5までのステップが劇的に加速していくのです。
この竹内均氏ですが、この方亡くなられる前までにこのアイデアのつくり方という解説を書いたときのお話ですが、そのときに既に280冊の本を書いています。
よく人から「何でそんなに本が書けるんですか。どこにそんな時間があるんですか」と言われるらしいんですが、彼はこの一生の間に280冊の本はたやすいと言っています。
何をしてるかというと、彼はある時点で自分自身に約束をしたそうなんですね。
400字詰めの原稿用紙にして、1月に300枚以上の原稿。これを必ず作るようにしようと自分自身に約束したということです。
自分自身に約束をしたと、これは1日に直せば10枚400字詰めですから、4000文字ですけれども、全てに文字を書き込むことをではないので、まあ、3,000字から4,000字という感じでしょうか。
実際の文字数をカウントしてみれば、これをテープレコーダーに録音をしていたと言います。
1970年の終わり頃からカセットテープというものは出てきていますの、当時でもこれを使って録音をしていく。3000字から4000字というのは、私も音声配信を毎日していますが、10分程度の量です。
これ毎日音声配信をしているということは、これを実際やっていることと同じです。
録音しただけでは文章することはできません。竹内氏の場合は、文字起こしを専任のアシスタントにに頼んでいたということです。
この頃の文字起こしというのは大変な作業です。これをパソコンもワープロもなかった時代にしていた。想像してみてください。テープレコーダーで音声を流して、それを原稿用紙に書き起こしていく。
ワープロが出てきて、これは随分と短時間でできるようになったと言っていますが、それでも、大変な労力が必要です。
10倍の読書力と文章力 がやってくる。今、そこにある未来。(新しいブラウザータブで開く)
でも、今、このAIの技術の発展によって、文字起こしは簡単にできるようになってきています。
以前の配信でも、クラウド上にあるMicrosoftのWordのトランスクリプトという機能を使えば、簡単に文字起こしをすることができると言いました。しかも、1ヶ月300分まで追加の料金はなしできます。
また、もしプロ仕様のものを使いたければ、Nottaというサービスがあったり、あるいは、私自身はSonixというサービスを使っています。どちらも5分くらいで文字起こししてくれます。
特にSonixはかなりいいですね。Wordをはるかに凌駕します。文字起こしした後のテキストの編集に関して言えば、Wordで30分かかるとすれば、Sonixでは15分かからないです。10分ぐらいで終わります。ほとんど修正するところがなく上がってきます。
まあ、テキストエディターで編集すれば、5分か10分で編集が終わってしまうくらいの、それぐらいの精度にまで上がってきています。あとは、ブログ記事用に編集するだけです。
ここまでのお話で、知識をツールを使った外部脳で一括管理することで、情報カードを使ったアイデアを生み出し、それを劇的なスピードでアウトプットできることがわかってきました。
しかも、音声を使えば、それはさら加速されます。
私自身、この毎日の音声配信を知ってこれを文字起こしをして、そしてブログ記事にしていくということで気づいたことがあります。
それはバラバラになっていた知識をひとつのトピックの10分程度の音声配信アウトプットにまとめる。これがいかに高速にできるかという点がポイントです。それが1日1回の配信に、高速にまとめることができるわけですね。
その時のスピードというのは、例えば週に一回週に数回ブログ記事を書いていたときよりもものすごいスピードでアウトプットすることができるようになってきています。
最近、聴く読書と呼ばれる本を声で読み上げるサービスが人気になっています。どんどんと音声が生活の中に入ってきています。音声配信もそうですね声のブログとか言われたりしています。
こういったAIとか、技術の発展の中で「声の文化」が「文字の文化」に浸透してきています。
これまでは声から文字にどんどんと進化していたものが、文字と声というものが同時に扱われて、それが思考の中で同時に動いていく。声を使うことによって、思考がものすごく高速化していくということを感じています。
音声を使うことによって音声配信もできますし、それを文字起こしすれば執筆にも使えます。
ブログ記事雑誌記事新聞論文あるいは竹内教授のように、それを原稿として本を書くこともできます。
もちろん、YOUTUBEの動画の原稿にもなりますし、ウェビナーをしたり、あるいはアウトプットとしてオンライン教材を作ることもできます。
それから、それを題材として、SNS、FACEBOOKやINSTAGRAMなどで配信をしていくこともできます。
こういったように、知識のデータベースを持つ。そして一貫したプロセスがあって、知識を組み替えて気づきや発見をアウトライン化してアウトプットを急速にしていく。
これは高速でアウトプットをする、まさしく3倍速アウトプットと言えます。そしてそれをリバーパスと呼ばれるように、3倍速文章術を使ってさまざまなメディアに形式を変えて配信をしていくことができます。
これを高速に半自動化したプロセスで行える。こういったフレームワークというものが今求められています。
今日、ここまでとにかく明るいやまけんがお届けする人生後半戦のハーフタイムでした。
次の配信もお楽しみに。
音声配信を鍛える: コンテンツのアウトプットを3倍速にする方法(新しいブラウザータブで開く)