特別著者インタビュー: エンジェル の著者 如月恭介さんに聞くと題し、今日は特別企画として、小説家の如月恭介さんのインタビューをお送りしたいと思います。
2012年にアマゾンが日本でキンドルストアを初めてから既に3年近くになります。当初はタイトル数も少なく、話題だけが先行するものだったのが、今では読書の選択肢の1つになりつつあります。特に、これまで定価の紙の本から、無料や格安の書籍がスマホやタブレットでも読めるようになったことがその理由に挙げられます。
そういった中、キンドル開始当初から個人出版をされてきた小説家の如月さんにお話を伺うことができました。この意味では、如月さんはキンドル小説の草分け的存在と言えます。では、早速お話を伺っていきましょう。
大山:
今日はお忙しい中、ありがとうございます。実は、私も如月さんの数ある小説の愛読者の一人です。ではまず最初に、如月さんの簡単な自己紹介からお願いします。
如月:
あ、そうですか。ありがとうございます。私は小説を書いて主にアマゾンKindleストアで販売している、如月恭介と申します。性別は男、年齢は非公開とさせていただきますが、決して若くはありません。本業は会社員で、今は電子機器のメーカーに勤めています。
趣味は飲酒、とくにモルトウィスキーが大好きで、1年365日、1日たりとも欠かすことなく飲み続けております。
大山:
どうして、小説家を目指そうと思ったのですか?
如月:
今から四年前のことですが、張り切りすぎて心身共に壊してしまった私は、当事勤めていた会社を依願退職しました。しばらくはとても会社勤めなど出来そうにもなかったので、さてどうしようかと頭を悩ませた結果、なぜか小説を書くことにしました。
ちょうどその頃電子書籍というものが普及し始めており、手軽に出版できそうだったことも、その要因かと思います。
大山:
エンジェルをお書きになったきっかけは、どんなものだったのですか?
如月:
じつは20年以上も前に一度、小説を書こうと思ったことがあります。きっかけはゼカリア・シッチン(故人)という、考古学者であり言語学者でもあった方の著作を読んだことで、人類の起源に関する氏の奇抜な意見にすっかり傾倒してしまった私は、是非ともそれを題材に小説を書きたいな、と思ったのです。
しかし筆無精の私はけっきょくそれを実行に移すことなく日々が過ぎ去り、でも心の片隅でその思いは燻り続けていました。そして前述のようにふとしたきっかけで小説を書き始めた私の中で、いよいよその思いが押さえきれなくなったというわけです。
大山:
エンジェルとは、どんな小説ですか?どんな点に苦労しましたか?
如月:
キンドル開始直後に出版しましたので、開始当初はシステムにも制限が多く、縦書きにならなかったり、ルビが正しく反映されなかったりと、出稿する際のフォーマット変換に苦労しました。また課税の対応にも苦労しました。(何もしないと米国の30%の源泉徴収税が課せられるので)
ストーリーとしては、人類創造論を基軸に置き、そこに遺伝子という「人間の設計図」を絡めた神話的SF小説(ミシック・サイエンス・フィクション)なわけですが、作品に込めた思いは少し別のところにあって、それは「人間の愚かさ」と「人間の尊さ」という、一見対極にある価値概念を、自分なりの言葉、自分なりの考えで、一つの世界に凝縮させようというものです。
人類存続の危機に瀕し、人間がその愚かさを露呈しながらも、愛や勇気といった尊さをもって難局を克服する、そういった物語を書いたつもりです。上手く表現できたかどうかは自信がありませんが。
創作で苦労したのは、一つは古代神話に関する描写の部分で、なにぶんゼカリア・シッチンの著作を読んでずいぶんと時間も経っており、記憶も定かでなく、本棚から引っ張り出した埃まみれの本と格闘するのにかなりの時間と労力を費やしました。
他に苦労したのは、遺伝子の取り扱いとその描写で、これも調査と理解にかなりの時間と労力を割きました。
大山:
現在、アマゾンの無料キャンペーンをされているそうですが、反響はいかがですか?
如月:
まずダウンロードの数ですが、本作品初めての無料キャンペーンということもあってか予想以上に盛況で大変に驚いています。途中経過ですが、アマゾン無料ランキングでも20位以内で推移しています。
具体的な反響としてはまだ特にありませんが、これから少しずつ、読者の方々から感想やアドバイスをいただけるのではないかと期待しています。
今回の無料キャンペーンで、沢山の方々に読んで頂く機会ができました。また、私の他の作品にも関心を持っていただけるとワクワクしながら期待しています。
大山:
素晴らしいですね。期待大です。ところで、エンジェルの、どこの場面が一番印象的ですか?差し支えない範囲でお願いします。
如月:
12章以降の部分です。その中でも特に最後のラストシーンで、この小説は、このラストシーンのためにあると言っても過言ではないと、私は思っています。あるいはそれまでの物語は、このシーンを演出するためにあると言ってもいいかもしれません。
創造主から課せられた運命を、完全には克服出来ないものの、愛と勇気を持って少しでも変え、自身の犠牲を厭わず次代に夢を繋ぐ――日本人は、あるいは人間はこうあって欲しい、いや、自分はこうありたい、という願いを込めて書きました。
大山:
なるほど。是非、読みたいところです。ところで、如月さんの理想の小説家像とは、どんなものですか?
如月:
正直に言ってまだ理想像が描けないのが現実です。ですからその理想像を見極めるべく、当面はあまりジャンルにとらわれず、多様な分野の作品を書いていこうと思っています。
大山:
エンジェル以外に、どのような小説がありますか?
如月:
「出来損ないの天使」「優しい悪魔」「サハラ」といった古代神話を題材にしたもの、「殺人は、甘く切ない薔薇の香り」という社会風刺的なハードボイルド、あるいは「除妖師シリーズ」というユーモラスなファンタジーがあります。また「ジミー・ザ・アンドロイド」という、よりSF色の強い作品もあります。
大山:
今後、どのような小説を出していきたいですか?
如月:
やはり読む者の心を打つ作品です。自然と物語の中に引込まれ、気がついたら笑い、そして涙している。そんな作品を書くのが目標です。
大山:
最後に、読者の方々に一言お願いします。
如月:
人間には多種多様な主義主張があるわけで、あらゆる行為には正解などあり得ない、というのが私の考えです。ですから作品を通じて読者に思想を訴えるつもりはなど全くなく、問題提起をして、それについて考えていただく機会を提供する、それがすべてだと思っています。
本作品「エンジェル」でもいくつかの、自分でも答えの出せない問題を取り上げてみました。例えば遺伝子操作に対する倫理観による抑制への疑問、例えば生物の進化に対する疑問、例えば古代神話で綴られる超越した神々への疑問、そして、本当の愛とは何か、勇気とは何か、という疑問――
本作品の登場人物が出した答えは、数ある選択肢の中の一つに過ぎず、それが正解だなどとは露ほども思っていません。皆さまにはぜひ、自分だったらこうする――そういう見方で本作を読んで頂ければ幸いです。
大山:
本日はお忙しい中、ありがとうございました。これからも良い作品で読者を楽しませて下さい。
如月:
こちらこそ、ありがとうございました。
著作紹介:
書籍名:エンジェル [Kindle版]
著者:如月恭介(@KyouskeKisaragi)
紙の本の長さ: 176 ページ
出版社: 夜明けプランニング; 2版 (2014/3/22)
出身は山口県、半農半商の兼業農家に生まれ、大学入学を機に東京へ上京してきました。大学ではほとんど授業に出ず、もっぱら格闘技や合コンやサーフィンに貴重な青春の時間を費やしました。
大学を卒業してエレクトロニクス関連の会社に入社し、一時期は会社勤めの傍ら格闘技(キック・ボクシング)に精を出したこともあります。八年前に転職し、その会社も前述のように四年前に辞めました。
その間、横浜、多摩地区、大阪、埼玉、川崎と移り住み、現在は横浜に住居を構えています。拙作の舞台に横浜が多いのは、そのせいです。家族構成は妻と小学生の娘がひとりの三人家族で、最近はすっかり生意気になってきた娘に手を焼く毎日です。