本の広告と販売促進: 紙の書籍を驚くほどたくさん売る方法
AmazonのKindleストアや楽天のKoboが始まった以降、ここ数年でだれでもが本を出版してオンライン書店で販売することは比較的容易にできるようになりました。
しかしその一方で、ただ本を出版しただけでは、オンライン書店で何十万冊とならぶ本の中で多くの読者へ届けることは簡単ではありません。
では、個人として本を出版している場合、自分自身の本の広告と販売促進をどのように考え進めていけば本の販売数を驚くほど伸ばし、その結果としてベストセラーへと結びつけていくことができるのでしょう。
「本の広告と販売促進」と題し、シリーズでお届けしていきます。
目次
紙の本の出版市場は、1998年以降20年に渡り縮小傾向にあるとはいえ、確立された巨大市場に変わりありません。
ここ数年の電子書籍の急速な普及以降、出版業界は変革の時期にありますが、そこには実績のある販売促進の定石が存在します。
一体どのようにして紙の本は広告・販売促進されベストセラー書籍は誕生するのでしょうか?
ここでは、これまで出版業界で使われてきた書籍(紙の本)の主な広告の一般的な方法についてまとめていきます。
一般的に言って、出版社は紙の本を中心に本を考えてきました。電子書籍がより多く読まれる様になったとはいえ、まだまだ特殊な存在のようです。
そこで、ここでは印刷された紙の本が取次を通して街中の書店に並ぶことを前提として進めていきます。
出版社はあらかじめそれぞれのタイトルの本を初版として何部印刷するのかを予め決め印刷会社に印刷を発注します。したがって、初版で売れる最大の売上高と粗利益は決まってくるため、そこから広告予算が計算されます。
通常、出版社の広告予算は次の計算式で決められると言われています。
1タイトルの書籍の広告宣伝予算 = 印刷部数 ☓ 書籍の定価 ☓ 10%
したがって、定価1500円で初版が3,000部であれば次のように求められます。
1,500円 ☓ 3,000部 ☓ 10% = 450,000円
この金額が多いのか少ないのか、相当長い期間に渡って苦労の末に本をかきあげた著者からしてみれば、「何だこれだけか」と思うかもしれません。
しかし、印刷部数が予め決まっており、売上高も印刷費用も予め決まっているのであれば、そこから捻出できる広告宣伝費用も決まってしまうのは当然といえば当然です。
そして、確立された業界の中で本の広告宣伝の方法も、長年の経験から定石が存在するといえるようです。
では、この予算はどのように使われるのでしょう?
紙の本の広告宣伝の媒体は、いくつかの限られたものに限定されます。
テレビやラジオと言ったマスメディア、SNS上でのバズなどは例外といえるかもしれません。
もちろん、映画やドラマなどとの抱合せのメディアミックスとなる場合には全く違ったアプローチとなります。しかし、新規参入やこれから売り出していこうと考えている一般の個人著者にとっては全くの別世界です。
ここでは、出版業界で長年に渡って採用されてきた実績ある広告の方法について見ていきます。
ほとんどの本の広告宣伝に継続して利用される方法には、以下の3つが挙げられます。
それぞれ、その特徴や費用などの面から詳しく見ていきます。
新聞をよく読む方は記憶にあると思いますが、朝刊の最初の数ページにわたって紙面下の小さく分割された欄に書籍の広告されます。これが費用対効果からも、最もよく使われる本の広告媒体と言われています。
この記事の読者も、この毎朝読んでいる新聞広告の中から本を選んで書店で購入したことがあるかもしれません。
これは3段8割(通称さんやつ)と3段6割(通称さんむつ)と呼ばれ、紙面下段のエリアを8分割または6分割した面積に広告を掲載します。
新聞広告ナビ(株式会社一水社)の「新聞に掲載する書籍広告」によれば、一回あたりの広告掲載料は8分割が新聞社により約50万円から約130万円(6ヶ月に6回の継続掲載で割引あり)、6分割で約70万円から約180万円です。
もちろん、先程求められた本の広告予算では、一冊の本だけでは予算オーバーとなります。そこで小さな文字で複数の本を詰め込むことになります。
これ以外にも、出版社がこれはと考える実績のあるベストセラー作家の新作や出版社が企画した販売促進企画などではより大きな紙面を使うことも少なくありません。
新聞記事のすぐ下にある5段と呼ばれる、よく目立つより大きめの広告枠では、全国紙で250万円から1,000万円となります。
さらに、非常に稀ですが紙面1ページ全体を出版社の全社的なキャンペーンで使うこともあるようです。これは15段と呼ばれますが、たった一回の紙面ながら1500万円から4000万円という、信じられないような料金です。
最近はあまりないようですが、出版社が大々的に全社的なキャンペーンを行うときには幻冬舎が使った事例もあります。
書籍の広告に使われるもう一つのメディアが電車広告です。雑誌や週刊誌の発売日に頭上の掲載されたポスターを見た記憶があるかもしれません。
毎日の通勤に電車を利用される方にはおなじみの媒体です。電車の天井から吊るされるポスターが「中吊りポスター」でよく見かけます。
出入り口のすぐ横の壁のポスター枠内に掲示されるのが「ドア横ポスター」、窓の上にシールで貼られたものが「窓上ステッカー」、そしてドアの上にある液晶画面で表示されるのが「デジタルサイネージ」と呼ばれるものです。
それぞれ、掲示される数と期間で広告費用は決まります。出版・広告のWebマガジンのKOTBコトピーの記事「電車広告の基本!本の広告効果と費用はどれくらい?」で紹介された事例は以下のとおりです。
この中でもドア横ポスターの効果が高く、これを利用した広告から多くのベストセラーが生まれているとのことです。
サンマーク出版はこれをうまく利用してベストセラーを量産しているようです。(8/21(月)~9/3(日)首都圏JR全線ドア横ポスター広告掲出中!)
ここまで見てきた新聞広告と電車広告は、いずれもマスメデイアや公共機関を使ったもので多額の宣伝費用が必要です。
これに対して、FAXを書店やメディア向けに直接送りつけるのがFAX DMと呼ばれるものです。
この代表的な例として、日本著者販促センターのFAX DMのサービスが挙げられます。(日本著者販促センター FAX DMのご紹介)
紙の本の売れ行きは書店に並ぶか、そして平積みで目立った場所に置かれるかどうかが勝負です。これに働きかけるため、実際に本が並ぶ大型書店や街中の書店に届き発注や平積みとなるように書店などに直接FAXを送信して訴求します。
また、書店の店員が平積みとなる本を選ぶ際には、メディアの露出度が大きな要因となります。このため、FAX DMを行う日本著者販促センターでは、マスコミにもFAXを送信するプランを用意しています。
FAX DMのコストはプランにより異なりますが、一件あたり20円から40円程度となります。書店1000件への送信であれば3万円程度の費用から可能です。
前提として、出版社などでの商業出版の書籍が対象で自費出版の書籍はできない場合が多いようです。(日本著者販促センター 料金プラン・ご利用の流れ)
では、FAX DMはどれくらいの効果が期待できるのでしょうか。
日本著者販促センターの「書店向けFAX DM 効果の一例」では、FAX送信数に対する書店での本の注文数の割合を試算しています。
主に出版社ですが少なからず個人の著者も利用しているようです。平均でFAX DM送信数に対して6.3%の注文件数で53.9%の本の注文数があったというデータがあります。
FAX DMで書店の注文があったとしても、実際に売れて初めて印税としての収入に結びつきます。
そこで、損益分岐点は次の計算式でFAX DMの効果を試算してみます。(本の定価1500円、FAX DM一件あたり30円、印税の料率10%を想定)
1500円x10%=150円(本の定価から一冊あたりの利益を計算)
150円/30円=5件 (一冊の本の売上から配信できるFAX DMの件数を計算)
つまり、FAX DMの配信5件に対して1冊の本が売れて初めて損益分岐点に達することになります。1,000件のFAX DM配信であれば、200冊の本が売れる必要があるということです。
※重要: ここに掲載した情報は参照元の情報をまとめた概要です。詳しい内容や実際の検討や具体的な依頼については、それぞれの運営会社へお問い合わせください。
出版社が使う書籍の広告や販売促進には、新聞、電車広告、FAX DMなどが主要な媒体となっています。
ここまでの内容を以下の一覧にまとめました。
新聞広告は、特に大手出版社が使う主要なマスメディア媒体です。全国紙や地方紙などを使い、数百万から数千万人という読者に対して配信できます。
その分、広告の予算も数百万円以上でと高額になりますが、出版社にとっては最も効果が読める方法と言われています。
電車広告は、新聞広告よりも数週間程度の期間に渡って継続的に広告を掲載できます。新聞よりも少ない予算でベストセラーが排出されることも少なくないようです。
予算も100万円程度からと新聞広告よりも少なめですが、企画次第では数千万円以上の場合もあります。
これに対してFAX DMは、大手書店や街中の書店、そしてマスメディアに対してダイレクトファックスでターゲットした先に直接届ける方法です。予算も数万円から25万円程度と手の届きやすい予算が組めます。
このため、出版社だけではなく個人の著者からも利用がある媒体です。ただし、本の広告自体が本の売上と最終的な利益に結びつくよう、効果的な運用が必要となります。
以上、いずれも紙の本で商業出版となっている書籍が前提です。多額の費用が前提となることからも、FAX DMも含め、出版社など潤沢な広告予算と経験が必要とされた専門的な業務だと言えそうです。
では、個人の著者が電子出版した書籍の場合は、紙の本の広告についてどう考え活用したら良いのでしょう?
ここで説明した書籍とは出版社からの商業出版が大前提です。印刷会社で予め印刷され取次を通して書店に並ぶ紙の本が対象となります。
したがって、最近の電子書籍とPOD(オンデマンド印刷)の場合には、全く違ったアプローチが必要となります。
電子出版で急速に拡大しているがマンガです。すでに、紙の本の売上と逆転するまでになっています。
読者の中にも、すでにスマホアプリで無料のマンガ本を読んだことがある方もいらっしゃるかもしれません。
次回は、このマンガ本がどのように拡大しているのか、その販売促進やマーケティングについて見ていきます。
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参考文献