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Kindle Unlimitedで何が変わるか – Kindle Unlimitedがもたらす本と読者の行動の8つの大変革とは?

Kindle Unlimitedで何が変わるか: 日本AmazonがKindle Unlimited読み放題サービスの開始をリリースしてから、ネット上では大変な騒ぎになっています。これは、多くの人がこの世界最大のブックストアでもあるAmazonが始めた「読み放題」が爆弾であると実感しているためです。

Kindle Unlimitedで一体何が起こるのでしょう?何が変わるのでしょう?

この記事では、あのAmazonが始めたスーパーパワーの読み放題サービスがもたらす日本の本と読者の行動8つの大変革について探ります。

豹変し始めた日本の読者の意識と行動

日本Amazonがここ2年準備を進めてきたKindle Unlimitedが、ついに日本に登場しました。ここ数年は、日本のリリースが近いことはうわさに登っていました。

それが去る6月にはリークされ、業界や電子書籍の本好き層の間で大騒ぎが始まりました。自分が読みたい本が読みたいだけ読める「読み放題サービス」です。

本の虫にはたまりません。

しかし、本当にそんなに魅力的であるのかどうか・・・。一部では疑いの声もあったのも確かです。

と言うのも、2014年に先行して始またアメリカやイギリスでは、大手出版社から「総スカン」を喰らい、中堅どころが参加するのみというありさまだったからです。

ベストセラー作品も数えるばかりで、数が多いのはKDPと呼ばれるAmazonの個人出版の作品がほとんどというのが実情でした。

大きな期待を含まらせて参加したアメリカの読者には、「期待はずれ」「つまらない」という批判が続出したのです。

Kindle Unlimitedが突然始まった日本では?

2016年8月に突然始まった日本AmazonはKindle Unlimitedがをリリースしました。

では、日本ではどうなのか。

蓋を開けてみれば、ほとんどの大手出版社の参加が判明していました。そしてそのタイトル数も、当初のリーク時の5万冊程度から大幅アップ、予想外の日本語Kindle本が12万冊、Kindle洋書が120万冊(実際には、それぞれ14万冊と140万冊)でした。

その詳しい実際の品揃えの内容は別途検証するとして、これだけでも予想を上回る展開です。これは、大変なことが起ころうとしているのかもしれません。

実際問題、日本の出版や本の読者層全体の姿形を大きく変える可能性が出てきました。

Kindle Unlimitedで何が変わるか

そこで今回、Kindle Unlimitedの登場によって私たち読者が得るメリットや読書という習慣がどのように変わっていくのか、その未来像を8つのポイントから探ってみたいと思います。

1、本は買うから借りるへ変貌する

これまで長い間、本は街の書店に行って定価で買うのが当たり前でした。

鉄道の駅の近隣や商店街には、必ずと言ってよいほど書店があり、通勤や休日の散歩がてら立ち読みに時間を潰すのが楽しみだったという人は多いはずです。

これがAmazonの登場で大きく変わることになりました。インターネットの登場とともに現われたAmazonのオンライン書店が、あれよあれよという間に急成長していきます。

これは、洋書好きにはたまらないことでした。それまで、東京の大手書店などで注文して何ヶ月も待たなければいけなかったものが、2週間ほどで海外からでも安く簡単に手に入るようになったからです。

Amazonが日本に進出し、この便利さが日本の本にも波及しまた。そして、本の数年の内に日本最大の書店になってしまいました。

そのAmazonが2012年に電子書籍を売るKindleストアを始めるや否や、これまた数年の内に本の構成割合(紙の本 vs 電子書籍)がガラリと変わろうとしています。

そんな中、満を持して登場したのが「Kindle Unlimited読み放題サービス」です。

Amazonの常勝戦略の1つが「圧倒的な品ぞろえ」なのですが、ここでも日本のライバルの群を抜くリスト数での登場です。

月額980円で、日本語Kindle本14万冊とKindle洋書140万冊が「読み放題」というものです。月に980円分の本1冊を読めば元が取れるわけで、それ以降は「全て無料」という感覚ですね。

つまり、980円の会費(ショバ代)でやり放題し放題というわけです。

もうこれは、(少なくともKindle Unlimitedの対象本であれば)紙の本もKindle本の定価でも「買う」必要はないわけです。

もちろん、あえて街の書店で紙の本を書店で買うことも、Amazonで買って配送してもらうこともできます。

しかし、大量の本を好きなだけ読みたいという人にとっては、紙の本の処分は頭が痛い問題でした。大切な本を捨てるわけには行かず、ブックオフに売るのも手間が掛かるし気が引けます。

よっぽど気に入った本以外は部屋の中で場所をとるだけ。この時期の夏は本から虫がわいて、痒くて困る思いさえします。

本は「読みたい時にすぐに借りて読む」という習慣に変わっていきそうです。

2、本を何冊でも好きなだけ思う存分読むことができる。

紙の本を、何十冊と手提げの紙袋いっぱいになるほど買って、得意になって家に持ち帰った事はありませんか?帰る電車の中、回りの人の目が特別な視線で向けられているような満足感がありました。

実は、これは若かった頃の私の道楽でした。しかし、本を運ぶのが重いだけではなく、数万円もする購入費は財布にもズシリと重かったのを覚えています。

デジタルである電子書籍には、当然ながら重さがありません。何千冊とスマホやKindle端末にダウンロードして持ち運ぶことができます。

スマホやWifiがあれば、ブロードバンドに繋がっていますので、いちいちダウンロードしておく必要さえありません。欲しい時にタップすれば、その場ですぐに読み始められます。

つまり、日本語Kindle本14万冊、Kindle洋書140万冊の全てが手の内にあるということです。

一度に10冊までしかダウンロード出来ない」という制約はありますが、どうせ一度に同時に読めるのはそれくらいが限度です。

面白くない本を返却して、今すぐ読みたい本に入れ替えれば良いだけです。何度繰り返しても問題ありません。

問題は、読みたい本が見つかるか、対象本リストに含まれているかだけです。

これだけ読み放題した後であれば、買ってもいいよね。というのがAmazonの狙いですね。

あるいは、シリーズの最初の数冊は読み放題で「その気にさせ」、その後の有料本をどうしても読みたくなるというのもありです。

実際問題、Kindle Unlimitedに参加した人の読書量と読書に支った費用は、それ以前と比較して3割多いそうです。(Amazonのリリース時の発表「アマゾン「読み放題」、本好きがハマる超魅力」)

Amazonの読み放題の販売戦略、憎いばかりです。

3、マルチデバイスでどこでも読書。紙の本は読むメディアの選択肢の1つに

これまで、私たちが情報を得る方法といえば、雑誌や新聞、フリーペーパーなどが多かったと言えます。しかし、これは最近では9割がテレビ、スマホ、タブレットやパソコンなど、画面から得るようになったということです。

こと本に関して言えば、電子書籍の登場でスマホやKindleなどのリーダー端末で読むようになってまだ日が浅いのは事実です。長年、紙の本で育ち慣れているため、この移行は遅々と進まないような気もします。

しかし今回、このKindle Unlimited読み放題サービスの登場で、一気に状況が変わりそうです。

スマホやタブレットの登場で、すでにニュースはアプリで読むようになり、通勤電車の中で新聞を広げる人は絶滅危惧種です。

また、ドコモが始めたdマガジンは、わずかな期間で多数の雑誌読者を電子雑誌の読み放題サービスに移行させています。月額400円で数百紙の雑誌が読み放題ですから、商品レビューに「コスパ」を連発して叫ぶようなタイプの人であればイチコロです。

実は、Kindle Unlimitedも240冊の雑誌が読み放題です。(dマガジンにとっては、そら恐ろしい脅威が現れました。)

情報を得るメディアとして、またコストの観点からも、電子書籍と読み放題サービスは圧倒的な優位性があります。

この意味からも、これまでにも増して、紙の本は「本のコンテンツ自体」や「情報・知識」を得るためのメディア(媒体)の選択肢の1つという位置づけになるでしょう。

4、本の読み方が大変貌する

当然ながら、読み放題サービスの登場で本の読み方も大きく変わることになります。少なくとも、次の2つの特徴あるタイプが有ります。

・読書三昧タイプ

Amazonプライム、Hulu、Netflixなどの動画の見放題サービスを体験したことがあるでしょうか。

レンタルビデオの時もそうだったのですが、一旦、気に入ったものに出会うと、シリーズ全てを見終わらないと気がすまなくなるという心理状態に陥ります。

例えば、テレビドラマや映画などのシリーズであれば、そのエピソードや各回のストーリーが1つ終わると直ぐに次と、時間も忘れ寝る間も惜しんで最後まで制覇したくなるものです。

本も同じです。本好きの多くは、夜を徹して小説を読み、気がついたら朝だったという経験、誰にでもあります。大好きな作家のシリーズであれば、次々と読みたくなります。

大人になって資金に余裕ができたので、子供のころに大好きで全部は読めなかったコミック本の全40巻を大人買いする人たちいますよね。

それ、Kindle Unlimitedの読み放題リストにあればどうでしょう?

コストの枠が取り外されると、一気にどどどっと洪水のように読書三昧の欲求が溢れかえります。

これにハマる読書の虫、少なくはないような気がします。

・知識の収集三昧

読書三昧に似ていますが、こちらは仕事や趣味、あるいは大学の研究などの目的で特定の課題について徹底的に知識の探求が必要な場合です。

これは、図書館で調べものをする時によくある状況です。

まずは、何か課題となる疑問点が湧く、あるいは一定の仮定を成り立たせるために、その証明となる事実関係や知識を徹底的に調べあげたいときです。

これまでは、コストが大きな壁でしたので、とにかく図書館に行って司書さんに手伝ってもらいながら必要な本を本棚から探し当てます。

国会図書館や大学の図書館でもない限り、すべてが一度に揃うことはありません。無い図書は提携している他の図書館から運んでもらうため何日も待つこともしばしばです。

もし貸出中であれば、何週間も何ヶ月も予約待ちすることになります。

Kindle Unlimitedではどうでしょう。

もちろん、対象リストにあるかどうかは一番の問題です。しかし、このリストが今後増強されていくに連れ、調べたい本が調べたいその場で(追加コスト無しに)すぐにダウンロードして調べられる。これは圧巻です。

しかも、ハイライトやメモを使えば、調べて知識をそのままデジタルデータで処理してアウトプットに繋げていくことができます。(この点に関しての詳しい方法は、「Kindle ハイライト: Kindle本の上級者が使ってブッチギリの差をつけている「ハイライトとメモ」のスマート活用術とは?」と「AmazonKindle: Amazonの読書ソーシャルサービスが本の世界をさらに楽しくする」を参考にしてください。)

一度に10冊の本を並べて、比較対照しながら調べていくことができます。Kindle Unlimitedの対象本であるかぎり、何冊でも入れ替えながら調べていくことができるのです。

現在のところは、品揃えやジャンルなどに問題があるかもしれません。今後の品揃え強化に期待したいところです。しかし、140万冊の洋書では、かなりの選択肢がありそうです。

この点は、中々気が付かないアプローチです。関心のある方は一考の価値があります。

5、読書の量が増え、読書マニアと読書SNSが本の売上や評価に大きな役割を果たす

日本Amazonの友田氏は、Kindle Unlimited読み放題サービスのリリース時に「読み放題サービスなら、ユーザーは気になった本をどんどん手に取ってくれる。」と発言しています。

この読み放題サービスが、これまで元来は本の虫であるにもかかわらず、日常の雑務で長く読書三昧な生活から遠ざかっていたような人を熱狂的な読者に変貌させる起爆剤となります。

毎日の生活に特に大きな不満がなくても、日常から離れて自分一人の時間を持って子供の頃のような読書三昧な時間を取り戻したいと感じている人は少なくありません。

あるいは、それに気がついていないだけかもしれません。

何かのきっかけで一旦それに気がつき、Kindle Unlimitedの読み放題サービスが読書マニアを大量排出する事が大いに予想されます。

そして、そうなった人たちがソーシャルサービスで出会うようになっていきます。

日本ではまだ知る人は少ないのですが、Amazonは「Goodreads.com」と呼ばれる世界最大の読書のソーシャルサービスを運営しています。

Goodreadsは2007年1月に米国カリフォルニア州サンフランシスコで始まったウェブサービスで、現在5,000万人のメンバーが15億の書籍の図書目録を作成し、5,000万のレビューを投稿しています。

ネット上のトラフィックを分析するサイトであるQuantcast社によれば、アメリカで64位のウェブサイトです。

日本にも読書メーターやブクログなどといったサービスがすでに読書好きの間で人気を博しています。(「読書におすすめのアプリとサービス: 厳選35 – 電子書籍と本の読書を別次元に進化させる方法」の「おすすめの読書のためのSNSサイト/アプリ」を参照)

自分の親しい友人や憧れの有名人がどのような本をよんでいるのか、知りたいものですよね。

あるいは、自分の読書レビューを公開して沢山のフォロアーを集めて目立ったり、同じような嗜好を持つグループを作って蔵書(愛読書)リストを公開したり、チャットや意見交換できたらどうでしょう。

Kindle Unlimitedで読書マニアが集まるソーシャルサービスが大きく成長しそうです。

6、電子書籍の普及が急速に進み、本の売上の定義が変わる

これまでに、長い間メディアで騒がれてきた「出版不況」は終わり、本の売上は増えているということをお伝えしてきました。

つい最近、インプレスがリリースした報告書(電子書籍ビジネス調査報告書2016)では、文字中心の本とコミックを合わせた電子書籍の売上(雑誌を除く)は1,584億円で前年比25.1%増という急成長を遂げています。これはコミックを含めた紙の本との合計のおよそ14%にあたります。

電子書籍・電子雑誌の市場規模予測 – インプレス総合研究所

これを紙の本のグラフに足したのが下のグラフです。(「出版不況は終わった? 最新データを見てわかること」林智彦氏作成)

紙書籍+雑誌扱いコミックス+電子書籍の販売金額推移(出版科学研究所/インプレス総研)

さらにインプレスは、この電子書籍の市場は拡大し2020年には3,000億円市場になると予測しています。これを上のグラフに当てはめると、およそ25%、書籍全体の4分の1に成長することになります。

更に大胆な予測をすれば、この傾向がこのまま続くとすれば、Kindle Unlimitedの影響を考慮しなくても今から10年後の2025年頃には書籍市場の50%を占めることになりそうです。

どんな業界にいる方も同じように感じると思いますが、15%の市場シェアが10年で50%になるというのは大変なことです。しかも、グラフから分かるように、V字回復した成長市場でのお話です。

これにKindle Unlimited読み放題サービスが加わりますので、変化はより予測しづらくなります。

これに加えて、本の売上の定義も変わります。

本の売上はこれまでのように「何冊売れていくら」だけで図ることができました。しかしこれからは、月額課金の売上を計算する「何人が何ヶ月継続したか」と著者や出版社に支払われる計算のベースになる「何人が何ページ読んだか」という指標が加わることになります。

7、街の書店は消え、デパート型かブティック型に絞られる

街の本屋さんに並んでいる本がKindle Unlimitedでも読めるようになったら、本屋さんはどうなるのでしょう?

これは難しい問題です。

幼いころから紙の本で育ち、小学校から大学まで本は全て紙の本でした。学校の図書館から借りた本も、街の本屋さんで買った本も全て紙です。

紙の本には親しみがあって、「紙の本でなければ本ではない」という意見もいまだ根強く生き続けます。

そうは言っても、電子書籍の普及の速度が遅くなるわけではありません。大手スーパーができて商店街がシャッター通りになったように、街の書店も次々と姿を消しています。

そうは言っても、紙の本には根強いファンが多く存在します。

今後、東京の池袋や新宿のように、地方でも県庁所在地や主要商業都市にあるデパートのような書店に人が集まる商業施設などの集約拠点であれば、これからも生き残っていくかもしれません。

また、カフェなどと併設したり、専門的なプロの目で特定の読者層にターゲットを絞ったブティック型の書店も引き続き人気を博すかもしれません。

私自身も、行きつけの街の本屋さんには、今のうちに立ち寄って時間を過ごすようにしておくことにします。

8、電子図書館の普及が急速に進む。図書館と読み放題のすみ分けが起こる。

Kindle Unlimitedでは、一度にダウンロードして読める本の数は、最大10冊までです。これをこえて本をダウンロードしようとすると、エラーメッセージが出て追加できません。

追加するには、10冊のリストからどれかを削除しなければいけません。

これは、まるで地元の図書館のようです。14万冊(洋書は140万冊)の本の蔵書がある図書館から借りるのとよく似ています。月額課金がありますから、手もとの有料図書館といったところでしょうか。

これから先、Kindle Unlimitedの「貸し出し」と「返却」に慣れてくると、「地元の図書館からも同じように電子書籍が借りられたらいいのに」と感じてくるようになります。公共の図書館であれば、本を借りるのは無料です。

この期待に応えるかのように、ちょうど良いタイミングで「電子図書館」普及が進んでいます。

実際に、ここ数年間で日本の電子図書館のサービスプロバイダーが以下の3社に絞られ、厳しい競争を繰り広げています。(詳しくは「電子図書館: あなたの街にも無料で借り放題の電子図書館がやってくる。でも、いつ?」を参考にしてください。)

  • DNP-図書館流通センター-丸善連合のTRC-DL
    2010年10月から電子図書館事業に進出した最古参です。図書館の業務委託である図書館流通センター(TRC)が販売と運用をしています。現在、日本の電子図書館市場の9割以上のシェアを持っています。2018年までの5年間で300図書館への導入する計画です。
  • KADOKAWA、講談社、紀伊國屋書店が設立した日本電子図書館サービスのLibrariE
    2013年7月にKADOKAWAの角川会長が構想を発表し同年10月に設立。2015年10月に最初の電子図書館となる「山中湖情報創造館」を開始しまし、2020年までの5年間で400図書館に導入する計画です。
  • 楽天が買収した世界最大の電子図書館サービスであるOverDrive
    2014年5月にメディア・ドゥと業務提携で日本市場に進出を発表。2015年3月に楽天が買収し完全子会社化し。2015年7月に龍ケ崎市立電子図書館に日本市場最初のシステムとしてサービスを開始しました。導入図書館の目標は公表していません。

アメリカやオーストラリアなどでは、9割以上の図書館が電子書籍を貸し出しているにもかかわらず、日本ではわずか数%でしかありません。この状況が大きく変わろうとしています。

現在は、わずかに日本全国に50図書館ほどが電子図書館のシステムを導入しているだけです。しかし、仮にこの3社が今あとの数年で800の公共図書館に導入するとすれば、全国3,246公共図書館の24.6%、つまり4つの図書館に1つは電子書籍を借りることができるようになります。

現在の情勢から、今回のKindle Unlimitedの展開が急速に進むであろうことが予想できます。であれば、遅かれ早かれ、図書館からも電子書籍を借りたいというニーズは急速に高まるに違いありません。

図書館の特徴は、信頼の置けるプロがしっかりとした目で選んだ本が並んでいる点です。

これに対してAmazonのKindle Unlimitedの欠点の一つは、品数が多いとはいえども、AmazonKDPの個人出版の種種雑多な本が多いことです。

一通りKindle Unlimited読み放題サービスの品揃えを見渡し、そろそろ飽きてきたというとき、図書館の本が、手もとのスマホのKindle Unlimitedのすぐとなりで簡単に手に入るとしたらどうでしょう。

大手出版社も、電子図書館には熱い視線を送っています。今は品揃えが数万冊程度ですが、今後、他の日本の読み放題サービスを押しのけて、Kindle Unlimitedの強いライバルになる可能性があります。

そうは言っても、Kindle Unlimitedと電子図書館がガチで勝負というのではなさそうです。

図書館で借りた本を購入したい、予約街の本やリストに含まれていない本を紹介した中から、AmazonやKoboなどでワンクリックで購入できるようになることが予想されます。

海外ではすでに多くの図書館で導入され、電子書籍ストアと電子図書館の共存が実現しています。そして電子図書館で借りた本を、KindleやKoboの電子書籍リーダー端末から読むこともできるようです。

これができれば、いつもの読み慣れた電子書籍リーダーアプリで電子書籍を読むことも、読みながら使ったハイライトやメモを返却後も手もとのスマホやパソコンで使うことができます。

この展開は注意深く見守りたいと思います。

結論

AmazonがKindle Unlimitedのリリースをした後から、この読み放題サービスは大変な注目を集めています。なぜ、これほどまでに騒がれるのか、不思議に思う方も入るかもしれません。

しかし、次のような、これから私たちの本を読む習慣に起こる変貌の予感がそうさせているのかもしれません。

  1. 本は買うから借りるへ
    小学校低学年のとき、学校の図書館で本を好きなだけ借りて下校時に読みふけった時間が戻ってきます。
  2. 本を何冊でも好きなだけ思う存分読むことができる
    紙の手提げ袋いっぱいに何万円も支払うことなく、スマホやタブレットに好きなだけダウンロードして思う存分読むことができます。わずかばかりなお小遣いで買わなくても、読書三昧できるのです。
  3. マルチデバイスでどこでも読書ができる。紙は選択肢の一つに
    好きなだけ読みたい本を、スマホ、タブレット、パソコン、リーダー端末など、どこでもどこからでも読むことができます。紙の本は選択肢の一つになります。
  4. 本の読み方が変わります
    読書三昧型」では、動画見放題サービスのように、気に入ったシリーズを最初から最後まで一気に読み進むことができます。また、「知識収集三昧型」であれば、関連した本、必要な本を積み上げ、「ハイライト」や「メモ」機能を使って重要な箇所やコメントを書き出すことができます。
  5. 読書の量が増え、読書マニアと読書SNSが本の売上や評価に大きな役割を果たす
    これまで、読書から遠ざかっていた人が読書三昧に目覚め、読書の量が格段に増えていきます。読書マニアとなった群衆が集まる場所、読書SNSが人気を博し、本の評価や売上に大きく影響するようになります。
  6. 電子書籍の普及が急速に進み、本の売上の定義が変わる
    Kindle Unlimitedなどの読み放題サービスが起爆剤となり、これまでの電子書籍の成長を一気に促します。この結果、2020年には電子書籍を含む書籍市場全体の25%、2025年には50%にまでなると予想されます。また、月額課金の読み放題サービスが増えるため、本の売上の定義も変わります。
  7. 街の書店は消え、デパート型かブティック型に絞られる
    悲しいことではありますが、商店街がシャッター通りになったように街の本屋さんも姿を消していきます。主要都市にあるデパート型や専門的な蔵書や高い付加価値を提供するブティック型が生き残ることになります。
  8. 電子図書館の普及が急速に進む。図書館と読み放題のすみ分けが起こる
    読み放題サービスのすぐとなりに「電子図書館」が姿を表します。ここ数年で全国の図書館の4分の1は「電子図書館」で無料で電子書籍を貸し出すようになります。Kindle Unlimitedに無いタイトルが電子図書館で読めたり、この逆も起こります。また、電子図書館にない本は、そこからKindleやKoboで買うことも、いつものアプリで読めるようになるかもしれません。

 

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