セカンドブレイン

セカンドブレインとは? 読書と知識管理にブレークスルーを起こす

セカンドブレインとは?

要約: コロナ収束後の大きな変化の中を生きていくには、個人レベルでのナレッジマネジメントが必要です。今、グローバルに広まりつつあるアプローチに「セカンドブレイン」がある。これは、情報を収集保存するキャプチャ、ナレッジを管理する、行動に活用して成果に結びつけるナレッジマネジメントにブレークスルーを起こします。

 

前回の記事では、「コロナ収束後に求められる読書術:この後から読書はどう変わるのか」を展望しました。今回は、そこからさらに先の世界を展望します。

これまでとは何か違う日常が訪れています。

ゆっくりとした毎日が始まりつつありますが、水面下では大きな変動があるように感じています。

もちろん、「三密」を避けてコロナ感染しないことが大前提ですが、これまでの対面や実店舗での営業にはこれほど大きな障害はありません。

緊急宣言の期間中のオフィスワークは、テレビ会議で遠隔が常識となりました。そして、多くの仕事は毎日の出社や出張なしでもこなせることが分かってしまいました。

これまで少なからず聞こえていた反対勢力の声が、次第に押し切られているようです。

人工知能(AI)、5GやIoTなど、横文字とアルファベットの技術がこれまでデジタルとクラウドに加えられ、これに続く社会の大変革が訪れようとしています。

インターネットの登場やソーシャルネットワーク・サービスなど、爆発的な情報が流れ込んでいます。まさしく、インフォメーション・オーバーロード(情報過多)となっています。

私たち自身、この変化について行けないという不安に襲われています。

例えば・・・

ビジネスでは、2025年問題が声だかに叫ばれ、中小企業も含めてデジタル・トランスフォーメーション(DX)で会社の全ての仕事がデジタル化され情報管理が急速に進んでいきそうです。私たちの仕事の仕方は、ますます変わっていくでしょう。

個人のレベルでは、デジタル情報はますますあふれ、スマホ、タブレットでクラウドで提供される様々なアプリを使って対応しようとしますが、タスク管理やスケジュール管理など、ますます混乱しています。

本好きにとってはどうでしょう。

相変わらず読書術の本が店頭に並び、多読、速読や賢い読書の方法があふれています。

しかも、電子書籍の登場により紙と電子という複雑な環境になり、多読に加えて読んだら忘れない、インプットもアウトプットしなければいけない、などなど・・・。

本の虫の頭の中は大混乱です。

一体どうしたらよいのでしょう?

セカンドブレインとは? 個人レベルでのデジタル化と知識管理(ナレッジ・マネジメント)

このコロナ感染が大流行する4月から5月にかけ、私はBuilding a Second Brain(BASB )という世界的なナレッジワーカーのコミュニティのイベントに参加しました。

Building a Second Brain(BASB )

世界中のナレッジワーカーがリモートで一堂に会して講義やグループセッションで議論をする場です。参加者は大学の教授や研究員、ITの技術者やプログラマー、起業家や投資家、大手企業の従業員など様々です。

特に多くの参加者があった都市は、ニューヨーク、シアトル、LA、ベルリン、シンガポールなどでした。残念ながら、東京からは私一人でした。

6週間にもわたる連続の講義と議論でしたが、1,000人近い参加者がZoomで一堂に解するのは圧巻です。

私たちが集まった目的は、セカンド・ブレインをどのようにして自分の中に作り、どう活用していくかを議論するためでした。

パーソナル・ナレッジ・マネジメント(PKM)

では、そのセカンド・ブレインとは一体なんでしょう?

セカンド・ブレインとは、デジタルノート化された知識やアイデアを第二の脳となるデジタル・ツールを活用して、ナレッジから価値の創造にブレークスルーを起こすシステム的アプローチのことです。

これは、次の3つの要素から構成されます。

  1. 情報を収集して保存する(キャプチャ)
  2. ナレッジを管理する(ナレッジ管理)
  3. ナレッジを行動に活用して成果に結びつける(シェア)

1.情報を収集して保存する(キャプチャ)

情報のキャプチャ(現在のステータス)

セカンド・ブレインには、テキスト、音声、動画、会議録音、その他あらゆる情報源の情報をキャプチャ(収集)します。

これには、ワードやその他のテキストエディタ、動画ファイル、あとで読むアプリのInstapaperやPocket、メモアプリのEvernote、タスク管理のTodoistやNozbi、クラウドストレージのDropboxやGoogle Driveなどをはじめ、これ以外にも様々なツールが含まれます。

しかし、ここから得られる知識は、ほとんどの場合は偶然かランダムでしか管理されていません。あなたの物理的な脳であるファースト・ブレインはこの真ん中で立ち往生しているのです。

今起こっているのは、実際にはあなたの第一の脳はどれも信用することができないということです。どこに必要な知識があるのか確信が持てません。

この結果、あなたの脳はこの溝を埋めようとして情報のオーバーフローから混乱が発生し、スケジュールの遅延や先延ばし、集中力の欠如、優先順位を決められないなど、多くの生産性の問題が発生しています。

様々なアプリやフォルダに散らばったノートやメモ、メールに添付された電子ファイル、これまでに作成されたワード、エクセル、パワーポイントなどのファイルや議事録など、全てが一定の目的で効率的に整理され1カ所にまとめられることで、物理的な脳のメモリは片付けられた仕事場へと様変わりします。

2.ナレッジを管理する(ナレッジ管理)

ほとんどのナレッジワーカーが抱える情報のオーバーフローの問題を解決するには、目的を持って戦略的に集中管理することが必要です。

これには、セカンド・ブレインではあらかじめ明確に決められたカテゴリーに整理し、1カ所に集中管理します。

セカンド・ブレインは、アメリカの有力雑誌であるタイムズ紙が世界の影響力のある100人に選んだ近藤麻理恵さんの「片付けの魔法」に似た一面があります。

収集された情報は、一定のひらめきによって取捨選択され1カ所に集められ、4つの収納箱に収められていきます。

これは、PARA(Project、Area、Resource、Archive)と呼ばれるタスクの流れに沿った大枠のカテゴリーとその中にあるプロジェクトや責任エリアの小カテゴリーにより分類します。

PARA (Project, Area, Resources, Archives)のワークフロー

収納の基準は、プロジェクト、責任エリア、リソース、アーカイブという4つの大きな収納ボックスの中に「仕事の行動性(アクショナブルかどうか)」の度合いによって置き場所を決めるというものです。

物理的なものの収納と大きく違うのは、収集された知識はその時々のプロジェクトやタスクに応じてカテゴリーの箱を移動していくことです。

これに検索やタグ管理を組み合わせて、いつでもどこからでも今現在進めるプロジェクトに必要な知識を取り出せるようになります。

また、1カ所に集められた知識は、段階的要約法(Progressive Summarization)と呼ばれる手法により、キャプチャした情報をプロジェクトやタスクの時間軸に沿って段階的に要約します。

これは、天才画家のピカソが「ピカソの牛」で雄牛のイメージをデフォルメして最もシンプルなイラストへと凝縮いく課程にも使われているアプローチです。

ピカソの牛と段階的要約法

収集された情報は、必要とする知識に段階的に要約されて断片化し、自分の経験や知見を加えることで将来の自分が必要とするナレッジへと転化していきます。

さきほどの「片付けの魔法」で言えば、これは「たたむ収納術」に似ています。デジタルな情報に物理的な収納スペースの問題はありませんが、必要な知識が実際に仕事で必要なときにすぐに取り出せるかどうかは、ナレッジワーカーにとっては死活問題です。

近藤麻理恵さんは、「たたむ」という一手間は洋服にエネルギーをそそぐ、またいたわり、愛情を示す行為だと言っています。

デジタルノートに一手間かけて段階的に要約することで、第一の脳の外側にあるセカンド・ブレインに収納し、第一の脳でいつでも使えるようになります。

これが大きな効果を発揮するのは、読書やWebから収集した情報です。

何百ページにもおよぶ本から得た情報や膨大なWebサイトやPDFから選んだページから、ハイライトした部分だけを自動的に抽出してEvernoteなどのナレッジ管理ツールに自動的に転送します。

これらの知識は現在進行中のプロジェクトや責任エリアごとに分類され、必要な知識の断片として使用できます。

さらに、これをより深く凝縮したものへと絞り込んでいき、最終的には自分自身の要約やアウトラインへと進めていきます。

これは一度に行う必要はなく、情報に出会ったときに収集し、あとから自分のプロジェクトやタスクの進行状況に応じて進めることができます。

これにより、本からいわゆる「読書ノート」が自動的に追加され、段階的にナレッジツールで要約されて残ります。Webの記事からの情報は、必要な箇所だけが抽出されていつでも使える状態になります。

3.ナレッジを行動に活用して成果に結びつける(シェア)

最も重要な3つ目の構成要素は実際の仕事に活用し、何らかの形でシェアすることです。

セカンド・ブレインの特徴は、収集し要約された情報を現在進行中のプロジェクトやタスクと連動して活用できることです。

ナレッジとして管理された知識の断片は、ジャスト・イン・タイムのナレッジ管理でいつでもどこからでも実際のプロジェクトに使うことができるようになります。

これは、トヨタのカンバン方式の生産方法に影響を受けたものです。実は、これは世界中の工業生産や流通に大きな変革をおこした事実として知られています。

セカンド・ブレインでは、ジャスト・イン・タイム以外にも、制約理論、Getting Things Done(GTD)などから多くを取り入れています。

ジャスト・イン・タイムのナレッジ管理では、セカンド・ブレインのフレームワークとして機能するPARAによってカテゴリー化されたナレッジを、GTDのフレームワークでタスク管理ソフトとナレッジ管理データベースと連携しながらタイムリーに連動した形で進められます。

ジャスト・イン・タイムナレッジ管理の例 – クリティカルパス・マネジメント(CCPM)

これにより、収集された情報は行動性(アクショナブル)の度合いと高度に要約されたナレッジからアウトプットへとつなげられ、ネットワークや読者とシェアしコミュニケーションしフィードバックを得るループへとつなげていくことで、より良い成果を創造できるようになっていきます。

セカンド・ブレインとは、1つのアプリやソフトウエアではありません。それは、第二の神経システムと言った方が近いかもしれません。

情報がナレッジとなり行動へと移り変わる流れでありプロセスです。

情報を収集しナレッジへと転化させる。そして、目的に沿った成果へと掘り下げていく。これこそがナレッジによるブレークスルーとなるのです。


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