アウトライン・プロセッシング: 最近のKindle Unlimitedなどの読み放題サービスも手伝って、私たちが本や文章を読む量は飛躍的に増えています。しかしこの一方で、多くの本好きの弱点は、本で読んだ内容を十分に使えないことです。
本で得た知識を血肉にして自分の考えをまとめ、それが多くの人に伝わってこそ読書の価値があります。この記事では、考える技術・書く技術の最強2冊「アウトライナー実践入門」と「クラウド時代の思考ツールWorkFlowy入門」をご紹介します。
同時に、なぜ今この2冊が最強なのか、その理由も探ります。
目次
本好きが本を読む目的は、その本の中で展開されるストーリーを楽しむことです。また、本から得た知識を使って自分の考えをまとめ、多くの人に伝えるというもう一つの側面は見逃せません。
ピーター・F・ドラッカーは、2020年ころまで知識化社会の到来を予測していました。今まさにその最終段階にいるわけです。
この知識社会では、自分の経験や研究、本から得た知識で裏づけ展開して考える・書く・伝えることが求められます。そこでは、大量に行き渡った知識の中から必要なもの取捨選択し、それを素早く処理してアウトプット必要があります。
それは、得た知識からどう考え、どう書くかといっても差し支えありません。では、この知識社会で求められる「考える」「書く力」とは一体どんなものなのでしょうか。
まず最初に、なぜ、この2冊が今多くの人に注目されているのかについて考えてみます。
本好きが本を読んだり、仕事や人生の経験や知識をベースに考察し文章に書いてアウトプットしたりする作業を「知的生産」と呼ぶことがあります。
この情報や知識をどのように整理し、考え、書くのか、これについては日本では長い歴史があります。先人たちがどのようにこの課題と向き合ってきたのか、その分岐点となった代表的な事象を簡略的ではありますが、独断的にまとめてみたいと思います。
・情報化の時代
戦後急成長期においては、情報化が急速に進む中で紙に書かれた知識をどう処理して考えるかが大きな課題でした。これには、梅棹忠夫氏の「知的生産の技術
梅棹氏が外国人から学んだファイリングは一般企業にすぐに広まり、研究者や知識人の間では京大式カードやKJカードが人気でした。
・デジタル化の時代
1980年代から90年代にかけたパソコンの急速な普及で、情報がデジタル処理されていく中でどう考え処理するかが緊急の課題でした。
そこでは、野口悠紀雄氏の『「超」整理法
・クラウド化の時代
しかしその後、情報がクラウドで行き渡り、誰でもが簡単に発信できるようになった中でも、爆発的に増え続ける知識を処理し、思考を整理するかには大きな進展がありませんでした。そこに登場したのが、今回ご紹介する「アウトライナー実践入門
この2冊の本が扱っているのは、アウトライナーというツールと、それを使うためのアウトライン・プロセッシングという思考と文章作成のアプローチです。この2冊は、ライフハックやブロガー、そしてクラウドツールに関心のある多くの方の関心を集め、Amazonのランキングや書評でも常に注目されています。
著者: Tak.
ブログ: Word Piece >>by Tak. Renji Talk別館ブログ
ライター、ブロガー。
Tak.氏は 2008年からブログを継続的に書き続け、アウトライン・プロセッシングとアウトライナーに関しての考える・書くことの本質とその技術・ツールについての考察を書き続けていいます。また、翻訳についてもユニークな視点をお持ちです。
実は、Tak.氏はAmazonのKDPでブログの記事から書き起こした「アウトライン・プロセッシング入門: アウトライナーで文章を書き、考える技術」を2015年5月にAmazonのKDPから自己出版しています。
これは、20年以上のアウトライナーと呼ばれるツールを使いこなしてきた経験をブログに書き続け、それを一冊の本にまとめたものです。前作はライフハッカーと呼ばれる人たちを中心に大人気を博しました。
※ライフハック 効率良く仕事をこなし、高い生産性を上げ、人生のクオリティを高めるための工夫。
(はてなキーワードより一部引用)
今回の著作は、それをより実践的に書きなおしたものでアウトライナーの入門編として更に進化し、実践的かつ初心者にも読みやすいものになっています。
著作の視点
Tak.氏の視点は、20年前の文章のデジタル化が急速に進む時代にアウトライナーに出会い、それまでの知的生産やアイデアをまとめ文章を書くたのめツールと方法について試行錯誤を重ねてきた中から生まれています。
彼の長年の経験と独自の考え方とアプローチは、知的生産の技術が紙に書かれた知識を扱っていた限界をどう越え、思考と文章の作成のプロセスを昇華させて行くかに焦点が当てられています。野口悠紀雄氏もアウトライナーについて語ることはあっても、具体的な理論や方法論は語ることはありませんでした。
この本の優れた点は以下のとおりです。
著者: 彩郎
ブログ: 「単純作業に心を込めて」
30代の共働きのワーキングパパ。若いころから知的生産に憧れを感じながらも、忙しい毎日の中で閉塞感を感じていたところに、Workflowyに出会う。この知的生産のツールと向き合って研究を続け、同時に自分のブログにその成果を書き続ける内に知的生産の本質的な気づきを得る。
彩郎氏は、アウトライナーの1つWorkflowyを2012年から本格的に使いこなして、自身のブログを通して日本に紹介してきたブロガーさんです。彼の100以上のブログ記事をきっかけに、Workflowyは現在最も人気が上昇中のクラウド型アウトライナーになりました。
著作の視点
個人が継続的な知的生産を効果的に使うツールとしてWorkflowyを使うときの考え方や詳しい方法についての手引書として秀逸な1冊です。
特に、アウトライナーの初心者が実際に使いはじめるときの疑問や戸惑いに対して、具体的に答えてくれるガイドとなっています。特に、ブログなどの文章を書くために、どう作業を進めていくかツールを使いこなすかを実践的な観点から説明してくれます。
この本は以下の観点からアウトライナーとしてのWorkflowyを解説しています。
これらは補完する2冊と言えます。「アウトライナー実践」では、アウトライン・プロセッシングの定義から始まり、考え方やアプローチの仕方から実践までをカバーしています。一方で「Workflowy入門」では、Workflowyが中心的なツールとして、その具体的な使い方を詳しく解説しています。
Tak.氏は20年以上にわたってアウトライナーを使いこなした経験からのソートリーダーです。アウトライナーに関する造詣が深く、アウトラインを使った思考と文章を生み出すプロセスを明確に理論化して多くの読者に影響を与えてきました。
彩郎氏はTak.氏からインスピレーションを受けてWorkflowyを手にし、それを深く追求したヘビーユーザーです。彼のブログから多くの人がWorkflowyを使いはじめました。
この2冊を組み合わせることで、初心者から上級ユーザーまでがすぐに使えるヒントに溢れ、思考や書くツールをどう使いこなし、より質の高いアウトプットにつなげるか、その具体的な方法が見えてきます。
「知的生産の技術」の梅棹忠生、「発想法」川喜田二郎氏、そして『「超」整理法』野口悠紀雄氏などが大学の教授という特別な知識人の階級から、その時代に求められていた技法を生み出し発信し、絶大な影響力がありました。我々一般人としては、先人の知恵に学び、それをいかに実践するかという受け手側としての立場でした。
これに対して、Tak.氏や彩郎氏は一般的なサラリーマンでブロガーです。私達と同じ立場から、クラウド時代の思考と文章のツールの考え方と技法を生み出し、ネット上の発信から出版までたどり着いてきたのです。
この点に、時代の流れとネットを通じた知識や個人的な意見の発信の進展を垣間見ることができます。
このお2人には、単に思考や文章作成のツールにとどまることなく、新しい時代を切り開く思考と文章作成の先鋭的なオピニオンリーダーとして立ち位置での活躍を期待したいと思います。
あなたは、この記事を読んでどのような感想をお持ちですか?あなたにとって、「アウトライナー実践入門
ぜひ、あなたのコメントを下のコメント欄からお知らせください。
あわせて読みたい記事