カテゴリー: AI時代の読書術

電子書籍の読書術: あなたの読書が驚くほど加速する厳選7冊とは?

電子書籍が急速に広まっていく中、「やっぱり紙の本」という意見が多く聞かれます。画面に表示された本をどのように読めば読みやすいのか、記憶にも残り、読書ノートも簡単に作成できる効果的な方法はあるのでしょうか?ここでは、電子書籍の読書について、入り口として大変に参考になる読書術 厳選7冊を解説します。

 

・電子書籍の読書 を加速させる読書術とは?

日本に電子書籍が日本に登場してから、わずか数年ですでに本格的な普及期に入ったと言えそうです。(バックアップする事実関係)林 智彦氏(朝日新聞社デジタル本部)によると、ケータイやコミックも含めた電子書籍の利用率は2015年に27%まで達しました。( CNET Japan 特集 林智彦の「電子書籍ビジネスの真相」 電子書籍は誰が読んでるの?–データを見たら意外なことがわかった 2015/09/28 )朝日新聞社デジタル本部

新しい技術や方式の普及率は、おおよそ16%を境に市場の急速な成長が起こると言われています。(エベレット・M・ロジャーズが提唱したイノベーター理論(イノベーションの普及)やジェフリー・A・ムーアのキャズム理論)実際に、多くの人が一度は電子書籍を手に入るのですが、今ひとつピンとこないという読者も少なくありません。紙の本と比較して読みづらい、なんとなく記憶に残らないような気がするというも意見もあります。

そんな中、電子書籍を読みこなす本格的な読書術があれば、もっとデジタルな特徴を活かして飛躍的な成果が得られるのではないかと考えました。

では、どのように進めたらよいのでしょうか。

これまで、紙の本の読書術は数多く出版されてきました。既に完成形に近いと言えます。しかし、電子書籍を対象にした読書術は、まだまだこれからです。

そこで、まずは代表的な紙の本の読書術を4冊取り上げます。そこで電子書籍とも共通する要素を洗い出します。そして、これをどう電子書籍の読書に活用できるかを、その次の2冊を例に検討していきます。

 

・紙の本の読書術

紙の本も電子書籍も、本であることに変わりありません。であれば、まずは紙の本の読書術で電子書籍に共通する観点を洗い出し、それをどう利用するかを考えてみます。

紙の本の読書について、次の4つの要素を取り上げた読書術を検討します。

  • 本の読み方のアプローチ
  • アンダーラインや気付きの書き込み
  • 読書ノート
  • アウトプット。どう得た知識を使うか

 

1、佐藤優「読書の技法」

読書の技法」では、紙の本でも電子書籍でも、どちらにも共通する読書に関しての全般的な考え方やアプローチが明確にまとめられています。

佐藤優氏は、元外務省官僚で鈴木宗男氏事件に関わったことで背任や業務妨害容疑で逮捕されますが、そのご保釈期間満了にともなって外務省を失職するという異色のキャリアの持ち主です。

その後、作家として執筆活動に専念している。諜報活動の期間が長かったので、短時間に多くの情報や知識を分析するアプローチや考え方に特に優れています。

300冊から400冊を読破し、独自の分析を加えて評論活動や著作の執筆をしています。本書で佐藤氏は、正しい読書法を身につけることが重要と言います。

佐藤氏自身、学生の頃は時間は無限にあると思っていましたが、人生の後半に差し掛かった今は最大の制約は時間と考えています。これは、私たち一般の読者にも全く当てはまることです。

「読書の技法」では、いかに読むべき本を取捨選択し、「何を読まないか」を見分けていくことを優先します。このために、本と読書の方法を次の3つに分けて考えます。

  1. 読書の第一歩となる基本書
    基本書は時間をかけて3回熟読し、シャーペンで囲い込みをし、ノートに書きだします。このために、熟読できる本をいかに絞り込むかが重要です。
  2. その他の読むべき本
    1冊30分程度で速読します。この際に、読書ノートを作成するものと作成しないものに分けます。
  3. 読書ノートを作成しないその他の本
    1冊を5分程度で超速読します。

佐藤氏の速読や超速読は、ちょっと見には信じがたいものがあります。しかしこれが可能なのは、読む対象となる分野の基本的な知識を基本書で熟読しているからです。

これは、元NHKアナウンサーで解説ドキュメンタリー番組の名人だった鈴木健氏の読書の方法と重なる部分があります。

熟読や速読中には、本にシャーペンで書き込みや重要箇所の囲い込みをします。また、速読中にはポストイットで目印をつけます。また読んだ箇所について自分の考え方や判断をコメントとして残しておくことを薦めています。読書ノートは仕事やプライベートも含めて1冊にまとめます。

データを失うリスクがあるので、読書ノートの記録にはスマホやノートパソコンは避けるようにとも言っています。(バックアップを取ればOK)

ただし、電子書籍についての記述はこの読書の技法にはありません。また、電子書籍自体についても、まだ現時点では本格的な利用に耐えないとして批判的でもあります。

 

2、齋藤孝「大人の読書術」

齋藤孝氏は、明治大学文学部教授で声に出して読みたい日本語』でベストセラー作家にもなられています。もともと教育がですが、専攻日本語の言語能力やコミュニケーション能力、健康法など、手掛ける分野は多岐にわたります。テレビにも多く出演されています。

斎藤氏も、読書を精読と速読の2つに分けることを薦めています。

目的と締め切りを設定することで、速読の技術は飛躍的に向上し、短時間で本をよむことができるといいます。また、本を買ったら、テンションの高いうちにほんのページをめくって本の中身を把握する「本をさばく」ことが大切だといいます。

明確な目的を持って目次や序文などから重要な箇所を把握できれば、「2割読書法」で、全体の2割を精読することで本の重要な内容を理解することができるとも言います。

また、「サーチライト」であらかじめ5、6個の重要なキーワードを探しながら読んでいくというアプローチも電子書籍の読書と親和性が高いと言えます。

齋藤氏の『「大人のための読書の全技術」』では、特にハイライトメモの使い方が非常に参考になります。三色ボールペン方式で、以下の3つの視点で躊躇なく本に書き込んでいきます。
 

  • 赤:客観的に見て、もっとも重要な箇所
  • 青:客観的に見て、まあ重要な箇所
  • 緑:主観的に見て、自分が面白いと感じる

 
この三色に加えて自分のコメントを書き足していくことで、本を読み終えたときには本自体が読書ノートとして機能するというものです。斎藤氏は、三色ボールペン方式を使った本が完成すれば、それ自体が読書ノートとして機能するマイブックになると断言します。
 
三色ボールペンについては、更に詳しい説明が「三色ボールペン情報活用術」「齋藤孝の速読塾――これで頭がグングンよくなる!」にありますので参考にしてください。

この三色ボールペンは、スマホやタブレット端末でKindle無料アプリの電子書籍リーダーやKindle FireのKindleリーダーアプリの「ハイライト」機能を使って再現することができます。また書き込みについても、リーダーアプリの「メモ」機能が使えますので、非常に参考になる部分です。

本書の本選びの考え方に、齋藤氏の電子書籍についての記述があります。そこでは、「電子書籍と紙の本の使い分けが必要な時代になってきた」ことを指摘しています。

しかし、斎藤氏は電子書籍については少し批判的な目で見ているようです。「電子書籍では読んだ印象が薄くなり、浅い読み方しかできない」といいます。

そして、自分にとって価値のある「マイブック」にするためには、線を引き、チェックを付け、付箋を貼ってつくり上げることが必要で、「紙の本でなければ意味が無い」と断言しています。

また、「マイブック」にした本をとにかく部屋においておく、持って歩いて、身近に存在させることで、自分の知的体力をつけることができると言っています。これは、紙の本のみで可能だというのです。

しかし一方で、この状況は電子書籍とその読書の機能や技術が進化していることで大きく変わる可能性があり、今後の進展について注目されています。

 

3、樺沢紫苑「忘れない読書術」

樺沢氏は、精神科医、メルマガ作家、映画評論家、グルメ評論家として活躍されています。アメリカ、シカゴのイリノイ大学精神科に3年間留学し、自殺予防に関わる研究に従事し自殺予防を強く提言する「自殺という病」(秀和システム)を発刊しています。また、スープカレーの第一人者としても有名です。

読んだら忘れない読書術」では、知識として定着し自己成長に役立ってこそ読書といえると断言しています。このために、脳科学に裏づけられた記憶の法則で、3つの基本を薦めています。

 

  • 記憶に残すために本を読んだ後1週間以内に3回〜4回のアウトプット
  • 隙間時間を使って効率的に読書をする「スキマ時間読書
  • 「速読」よりも深く読むことを意識する「深読読書術

また、「記憶に残る読書術」として、特に次の3つのアプローチを解説しています。

  1. 深く記憶に残す「マーカー読書術」

    読みながらの気づきを書き込んでいくために「汚く読む」ことを薦めています。このために不可欠なツールとして次の2つを使います。

    • (1)蛍光マーカーで、気に入った一節にラインを引く(付箋を貼る)
    • (2)ボールペンで、余白に気づきを書き込んでいく
  2. 複数の切り口で人に勧める「テレビショッピング読書術」
    人にすすめるには自分自身がより深く理解していることが必要で、また、人にすすめるという行動でより強く「記憶に残る」効果があるといいます。
  3. 気づきを人と共有する「ソーシャル読書術」
    FacebookやTwitterなどのソーシャルネットワークでコメントをすることで、より強く記憶に刻印されます。またメルマガやブログなどのメディアを利用して自分の考え方をレビューとして発信することは、アウトプットを前提に読書をする事が必要です。

これ以外にも、脳の記憶を刺激して読んでも忘れない読書のノウハウが満載です。

また樺沢氏は多くの電子書籍をお読みで、紙の本と平行して読書するメリットを薦めている方でもあります。電子書籍のメリットに気づいている方でもあります。「読んだら忘れない読書術」の第6章では、電子書籍の読書術にも簡単に触れています。

電子書籍であれば沢山の本をリーダー端末に入れて持ち運びいつでも「スキマ読書」できることはもちろん、特に面白いのは、紙の本で大きな悩みであった「本を捨てなくていい」という点です。

ここに紹介したどの読書法も、本にラインを引き気づきやコメントを書き込むことを重要視しています。しかし、書き込みのある本は人に譲ることも古本として売るわけにはいきません。

捨てるしか無いのです。本を捨てるというのは、愛読家には悲痛な思いがあります。しかし電子書籍であれば、捨てる心配をすることなく、思う存分ハイライトやメモを加えて自分自身の記録を残していけるのです。

この「ハイライト」と「検索」機能について、樺沢氏は紙の本での読書術を再現される考え方について説明しています。この2つの機能があれば、ある程度、本の中を行き来するのと同じようにジャンプして開きたい箇所を表示することができます。

このように「紙と電子書籍の二刀流が効率的」と言っています。ただし残念ながら、電子書籍の読書術についての更に詳しい説明はありません。

 

4、本田直之「レバレッジ・リーディング

レバレッジ・リーディング』は、ビジネスコンサルタントであり投資家でもある本田氏が本と読書を自分自身への投資活動と捉え、一貫した方法論を説明している点が秀逸です。

レバレッジとは「てこ」のことです。テコの原理を応用して、より少ない労力で「100倍のリターンを得る」ための読書へ投資する方法を、ご自分の経験や成功の体験談から解説しています。

多読=投資」として、株や不動産といった他の投資活動と同じように、読書も戦略を持って実践すれば、リターンを得られるノウハウであるとし、80対20の法則を読書に利用して「20%のうちの80%、つまり16%」をつかめばOKとまで言い切っています。
 
読みながら気になった箇所の余白にどんどん書き込み、著者の貴重な経験を後から記録できるようにマーキングしてします。そして、3週間に一度はパソコンに入力してレバレッジメモにまとめていきます。そして、最終的には分類し印刷して持ち運び、あらゆるシーンでビジネスに利用することを薦めています。

本を読む目的意識が非常に高く、目的が明確だからこそ読書を早く的確にできる合理的な方法ともいえます。

残念ながら電子書籍以前の2006年の著作であるため、電子書籍の読書についての解説はありません。しかし、ヒントとなる多くのアイデアが詰まっています。

 

5、奥野 宣之「読書は1冊のノートにまとめなさい[完全版]」

紙の本の読書術の最後は、奥野宣之氏の「読書は1冊のノートにまとめなさい」です。

奥野氏は、出版社および新聞社への勤務を経て、現在、フリーランスの文筆家。2008年、『情報は1冊のノートにまとめなさい』がベストセラーとなり、この「読書は1冊のノートにまとめなさい」はその続編です。

奥野氏は、手書きで時間をかけて読書ノートをまとめるからこそ、自分の身になり読書体験を記録管理していくことができると言います。「すべては読書生活を、より重層的で濃密なものにするための仕組みだ」といっています。

これは、感じことを何度も書いて覚える、同じような計算問題を何百回と解いて頭にたたき込む、九九や公式が自然に出てくるまで何度も暗唱するのと同じだといいます。そうでなければ、「血肉」にも「財産」にもならないのだと断言しています。

また、これこそが「読書ノートの効果」であり、自分がどんな本を買って読み、本のどこに注目し、何を思ったかをノートに残しておくことが読書の体験を豊かにするというのです。

奥野氏の「読書ノート」マネジメントでは、読書を5段階に分けて進め、「読む」だけでなく、「探す」「買う」「活用する」という読書の流れ(フロー)全体を作り上げて同時に記録します。

  1. 探す−読みたい本をリストアップ
  2. 買う−リストアップした本の現物をチェック
  3. 読む−読み進めながら、読書ノート作成の準備をする
  4. 記録する−読んだ感動や嗜好などの体験がしっかり残るように「読書ノート」をつくる
  5. 活用する−読み返したり、検索して参照したりすることを通じて知的生産や自己形成に役立てる。

読書ノートに書き出す箇所やコメントは、ページの角を折る、ペンで印をつける、3種類の付箋をつける、まるで囲んでマーキングするなどの方法を使います。

また、読書ノートを完璧に管理しておきたい場合には、パソコンでノートの「索引データ」を作っておくことを薦めています。このパソコンでの索引と時系列に1冊の読書ノートにまとめられた記録が、あとからの「検索」や「参照」に役立ち、これだけで再読を可能にして「読書百遍」となるといいます。

最終的には、「すべては読書生活を、より重層的で濃密なものにするための仕組みだ」といっています。デジタル本の読書ノートを作るにあたっても、とても強い味方になるアドバイスがあふれています。

電子書籍の読書術の一環として『1冊のノート』にまとめるのは十分に「あり」の発想です。しかし同時に、デジタルデータを画面に表示して読んでいる電子書籍の内容を手書きでノートに書き出すのは苦痛を伴うとも言えます。

また、書き込みやページを折る、マーキングをするなどの作業は電子的なアウトプットまでのプロセスの一環としてできるような気もします。

 

・電子書籍の本の読書術

これまで、「」とは「紙に印刷され製本されたもの」というのが定義でした。(1964年のユネスコ総会で採択された国際的基準)しかし電子書籍の登場で、本のデジタルデータも本であるとされ、端末の画面に表示された文字を読むことも読書となりました。(例えば次の報告書が詳しい。「電子書籍市場の動向について」公正取引委員会 競争政策研究センター)

しかし、これまでの読書術は紙の本を前提にしています。このため、画面に表示された「デジタルな本」をどう「読む」か「まとめる」か「処理する」かについて多くは語られてきませんでした。

とはいえ、本格的に電子書籍が多くの人に読まれるようになった今、何らかの取り掛かりが必要です。そこで、その入口となる2冊をご紹介します。

 

6、和田稔 《新版2017》本好きのためのAmazon Kindle 読書術: 電子書籍の特性を活かして可処分時間を増やそう!」

和田 稔は、ブロガー/ITエンジニアとして活躍しています。ロスジェネ世代の新しいワークスタイルを模索するブログ「モンハコ~問題の8割はコミュニケーション」を主宰されています。

本書は、Amazon Kindleの読書術をご自分のユーザーの観点から解説した数少ない電子書籍の読書術本の1冊。2014年の初版から1年経過して、第2部を追加したアップデート増補版です。

第1部では、Kindleの基本的な解説から端末の選び方、読みたい本の見つけ方、Kindleのクラウド蔵書サービス、読書サービス・アプリの使い方などを知ることができます。

第2部では、2015年に登場したパソコン用のアプリを使っての読書の方法に加え、ウェブ上に日々アップデートされる情報をどう効果的に収集して管理し、Kindleを使って読書の一貫として楽しみ仕事にも利用するかを解説しています。

本好きのためのAmazon Kindle 読書術」は、電子書籍の初心者向けにAmazonが提供するKindleに関連したサービスの全体像と個々のサービスの利用方法を知る良い入門書といえます。

ブロガーとして活躍するKindleの1ユーザーが、どのようにウェブ上の情報と電子書籍を日々の読書と仕事に活用しているかがよく分かる1冊です。

 

7、大山賢太郎「デジタル読書の技法: アナログ人間でも飛躍する知識術」

最後に、拙著「デジタル読書の技法 アナログ人間でも飛躍する知識術」をご紹介します。これは、私自身が探し必要としていたものを、どうしても見つからなかったため、ついに自分で書いてしまったというのが正直ところです。

お恥ずかしい部分もありますが、電子書籍の読書術の入り口として参考にしていただければと思います。電子書籍の読書を進化させるため、お気づきになった点やコメントを頂けましたら幸いです。

最初に紙の本の読書について、4つの要素を取り上げました。

  • 本の読み方のアプローチ
  • アンダーラインや気付きの書き込み
  • 読書ノート
  • アウトプット。どう得た知識を使うか

これまでの読書術は、「本をどう読むか」また「どんな本をよむか」そして「どうまとめるか」に主に視点が置かれていたように感じます。実は、本を読む目的の重要な視点は、本で読んで得た知識をどう使うか「アウトプット」に重点が置かれるべきではないでしょうか

その意味では、非常に有利な特徴を数多く持っています。コミュニケーションや情報の伝達がデジタル化された現代では、アウトプットがデジタルとして処理可能であることが必須条件です。アウトプットから逆算して読書術を考える必要があるのです。

デジタル読書のすすめ

デジタル読書の技法」では、紙の本と電子書籍(デジタル本)とその読書について比較対照するところから始まります。まず、紙であるから良いところ、またその制約について明確にします。そして、なぜ今、電子書籍の読書(デジタル読書)が注目されるべきかを考えます。

次に、電子書籍の特徴であるクラウドで提供されるサービス全体を読書に活用すること、そして紙の本の読書とどう連携させるのかという考え方を、両者の位置づけをフレームワーク思考で解説していきます。

こう言うと難しく聞こえますが、要は電子書籍では様々な読書機能がクラウドサービスとして同時に提供されたものを紙の本も含めて図式的に説明しています。この読書専用の便利なシステムのメリットと活用方法を理解すれば、紙の本がデジタルとなったことによる大きな可能性が広がります。


デジタル読書のフレームワーク

単に、(紙の本と比較して)電子書籍は読みづらい、読んだ実感がしない、記憶に残らないと諦めてしまえば、電子書籍のメリットは全く生きてきません。紙の本を再現するだけがデジタル処理された電子書籍の目的ではありません。

読書をインプット・処理・アウトプットまで一貫したプロセスと考える

日々多くの情報がWebやデジタル表示されたデバイスを介して処理される中、もともとデジタルに記録されたデータを紙に印刷して読書をするデメリットの方が、紙の本の読みやすさを上回っていないないでしょうか。

例えば、ここまでに説明したように、Kindleのハイライトやメモ機能を使えば、紙の本にアンダーラインや書き込みをするのと同じような効果があります。これは、単にデジタル処理でジャンプして行き来するだけではありません。

本書の最後の第4章「デジタル読書の技法」にあるように、(著作権のゆるす範囲で)テキストデータとして記事や論文などの執筆のアウトプットに利用できます。また、これに多少の処理を加えれば、追加の時間を取ることなく自分自身の読書ノートのデータベースとしてすぐに活用できます。

読書のクラウドサービスと読書機能が本の読み方を一変させる

クラウドの提供する読書管理機能やストレージを使えば、自分自身の一生の書斎の本棚としてクラウド上で自分の蔵書やドキュメントを一括管理することもできます。

また、本全体を検索するのはもちろん、Kindle端末を使えば、何百冊、何千冊という中から全文検索することもできます。さらに、Google Playブックスでは、ネット上からブックストア内の世界中の在庫全体を全文検索してヒットした該当箇所を表示し、その場で購入して読み始めることができます。

これまでの紙の読書だけにこだわっていたとしたら、この全く新しい読書の世界から隔離されてしまいます。しかしこれは、紙の本を全否定するわけではありません。紙の本の読書をエンジョイしながらも、アウトプットのためのデジタル読書を同時進行させようということです。

デジタル読書の制約をいかに越えていくか

電子書籍で初めて可能になった新機能は数多くあります。これからも増え続けるでしょう。しかし、これまでの紙の本から引き継がれた制約のため、デジタルとなった著作物の可能性を最大限に活かしていると言えない部分も現時点では散見されます。

例えば、自分が購入した電子書籍にハイライト箇所をテキストデータとして利用できる数には上限が設定されている場合があります。ハイライトした数が10程度を超えると、非表示となってデジタル処理できないのです。また、出版社の意向もあって、Google Playブックスでネット上から検索できる電子書籍の本はまだまだ多くありません。

ただし、2007年のKindleストアがアメリカで開始され、その後2012年に日本、イギリス、ドイツでと、わずかな期間のうちに世界13カ国でKindleストアが展開しています。Google Playブックスのコンテンツ内検索の表示からの販売も本格的に世界展開をはじめました。

ますます多くの電子書籍ユーザーが、デジタル読書の可能性に気が付き始めています。電子書籍の読書術も、さまざまなサービスの拡大や電子書籍の普及にともなって、急速に進化していくと思うのです。

それでも、今現在すでに、電子書籍の読書には大きなメリットが数多く出現しています。先進的なユーザーがまずはそのメリットを活かして先に進み、デジタルな読書の可能性はさらに広がっていくに違いありません。

ぜひあなたも、電子書籍の可能性をどう活用していくかを探ってみてください。その第一歩として、拙著「デジタル読書の技法: アナログ人間でも飛躍する知識術」がお役に立てれば幸いです。

 

 

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