Last Updated on 2022年4月10日 by 大山賢太郎
DX時代のプロジェクト管理: 知識管理でプロジェクトを2倍速化する法則
個人のプロジェクト管理の最大のボトルネックは、仕事の期限と知識の管理が分断されていることです。プロジェクト管理を2倍速化する方法を実例を使って解説していきます。
目次
DX時代のプロジェクト管理: 2倍速化の実例
つい先日、私は音声配信サミットというプロジェクトを完了しました。ここではたくさんの人に集まっていただき、2000人という参加登録リストを集めることができました。
とても成功裏に終わったということで満足もしていますが、数々の反省点もありました。また、多くの気付きがそこから生まれてきています。
どういうものかというと、こちら本来であれば90日のプロジェクト期間が必要だったところ、これをわずか45日で完結することができました。
もちろん、これはお尻の締め切り、イベントの開催日が決まってしまっていたので、どうしてもその期間で完結をせざるを得なかったというそういう側面もあります。
しかし、いずれにしても2倍速でプロジェクトを管理して完結したという点に変わりはありません。
そこで私が気づいたのは、知的ワークのプロジェクト管理というものは、まさしく知識管理だということです。
これまでのタスク管理で欠落していた観点
プロジェクトの管理は知識管理が9割、あるいは特にパーソナル個人的なレベルで言えば、DX時代のプロジェクト管理は知識管理が10割とも言えます。
これまでプロジェクト管理はタスク管理と結び付けられて語られてきました。GTD(Getting Things Done)というのがそれです。(はじめてのGTD ストレスフリーの整理術)
ここでタスク管理というものが盛んに議論されました。
もちろん、これがプロジェクト管理にも大きく関係して来るわけですが、しかし、このGTDには知識管理という視点が欠落していました。
実際にいま知的ワークをする我々にとってみて、知識をどう管理していくのかというのは、プロジェクトをどう管理するのかとほぼ同じことを意味してきています。
この2つが同時進行していかない限り、うまくプロジェクトは完結してくれません。
参考: 情報整理 4つの法則: 究極の知識管理のルール(新しいブラウザータブで開く)
DX時代の知識管理 とナレッジワーカーの関係
ナレッジワーカーという言葉ですが、これはずいぶん前の本ですけれども、ピータードラッカー氏が1969年に出版した「断絶の時代」で提唱された言葉です。(ナレッジワーカーになるにはどんなスキルが必要?知識を集合させ、新しい価値を生み出す仕事: 俵谷 龍佑 Ryusuke Tawaraya)
どういうことかというと、「自らの専門知識や経験則に基づき課題を解決する役割」と言われています。
それまでのいわゆるホワイトカラーというような大きなくくりだけではなく、もっと高度な知識を使った仕事問題解決をする仕事というそういう意味合いです。
今現在、これだけデジタル化が進んで、AIなどの技術が進歩して、さまざまなホワイトカラー、あるいはナレッジワーカーの仕事が自動化され置き換えられています。
そこでは、高度な問題解決ができる、自分自身で問題を提起して、それを自分自身で解決をする提案をしていくアプローチが強く求められています。
つまり、知識管理をしながらプロジェクト管理ができる能力というものがもう必須条件となってきているということでもあります。
そして、これは集めてきた知識や経験をどう整理するかどう処理するか。断片化した知識からどうアイデアを引き出すかどうアウトプットするのかというのが非常に重要な視点となってきます。
DXやデジタル化で私たちの仕事や生活が大変貌しつつある今、その明確な方法が求められています。
参考: ワーケーションと知のデジタル化(DX)そして知的資産について考える(新しいブラウザータブで開く)
プロジェクト管理における知識管理の考え方
これは、例えていうと、料理で言うならば材料の整理や下処理に当たる部分です。実際の料理や配膳は最後のアウトプットにあたる部分です。「料理は段取りが9割」などとも言われます。
これには、次の4つの大切な流れがあります。
- 情報収集
- 整理格納
- 知識の処理
- アウトプット
つまり、知識を要約し断片化して、つながりや関係性から新しいアイデアを発見する、アウトプットするところまでのプロセスです。
これを実現するためには、一貫した、そして実証されたフレームワークが必要となってきます。そしてこれを実現するのが第2の脳ナレッジブレインというものです。
参考: 3倍速文章術: 考えるスピードでアウトプットする(新しいブラウザータブで開く)
第2の脳: ナレッジブレインで知識を整理する方法
第2の脳: ナレッジブレインでは、3つの原則からこれを実現しています。
ここからは、この3つの原則をご説明します。
1. PARA(プロジェクト、責任エリア、リソース、アーカイブ)
まず、第1にPARAと呼ばれる整理のし方です。
これは、プロジェクト(P)、責任エリア(A)、リソース(R)、アーカイブ(A)の頭文字を取ったものです。
プロジェクトの知識管理の基準は「行動性」と「期限」
「プロジェクト」を中心に整理をしていくわけですが、整理をする基準は「行動性」と「期限」です。つまり、プロジェクトを中心に整理をするということです。
よく、図書館のような分類方法を参考にして、それを自慢する人がいます。しかし、こういった図書館のような一般向けのカテゴリーには全く意味がありません。
これはプロジェクト管理という言う意味では逆効果です。なぜならば、他人のインプットを基準にした整理の方法だからです。
そうではなく、自分のアウトプット(プロジェクト)を基準に整理をします。
今回の音声配信サミットを例にとれば音声配信というプロジェクトを設定しました。
そして、それをサポートするバーチャルサミットという情報リソースを見つけてきて、その中にリソース情報として知識の断片をたくさんその中に入れました。
したがって、「実際に動いているプロジェクト」と「それをサポートする知識」という基準で整理をしていきます。
そして、この知識はプロジェクトの進行や終了にしたがって、柔軟に置き換わっていくことになります。
期限のない目標や継続的なプロジェクトの管理方法
もし、期限のない目標や継続的なプロジェクトがあれば、プロジェクトとは別に管理します。それが「責任エリア」です。
継続的にフォローアップしながら、そこから新しい、期限が決まったプロジェクトが生まれれば、それを別プロジェクトとして立ち上げることになります。
プロジェクトの完結と再利用
そしていったんプロジェクトが完結すれば、それは終了したプロジェクトとして「アーカイブ」へ移動します。アーカイブとは文書庫のようなものですね。そこの中に移され、フォーカスの対象から外されます。
そして、もし今現在使うべき情報や知識ががその中にあれば、アーカイブに移動するとき、あるいは新しいプロジェクトが立ち上がったときに、必要な場所へ移動させます。
すでに過去の終わったプロジェクトなどのフォルダに仕分けられているため、見つけるのは容易です。必要であれば、キーワードや時間軸で検索をかけられます。
重要な視点は、シンプルかつ強力であることです。そうでなければ、自分の脳がくたくたに疲れた時など、いつかシステムをフォローすることを拒否してしまうからです。
こうして知識を整理して保存し、後からいつでも何度でも再利用することができるようになります。
参考: 「知的生産の技術」とセカンドブレイン: 日米比較から考えるデジタル化する知的生産の進化論(新しいブラウザータブで開く)
2. ジャストインタイムでプロジェクト管理する
2つ目にジャストインタイムです。
「ジャストインタイムとは、必要なときに必要な場所に知識が置かれている」ということを意味します。そして、いつでもそれが使える状態になっているということです。
また、プロジェクトは期限と同時進行で進んでいきますが、その中でこの知識が成長していくということになります。
つまり、プロジェクトの進行に従って、「段階的要約法」などで情報が要約されて形を変え、工場の生産現場でいえば、「仕掛品(WIP)」となっていきます。
そしてそこから、知識の組み合わせや並べ替えから、新しい気づきや発見へとつながります。そして、最終的には、それがアウトプットに使われていく、という流れです。
今回の音声配信サミットのプロジェクトでは、次ような4つのサブプロジェクトに分けられました。
- インタビューと動画配信
- 参加登録ページ、購入ストア、会員サイト
- 講義ノート、文字起こし
- イベント用の配信ページ
まずはインタビューのお願いと同意を取ること、日程調整をして実際に収録します。そしてそれを動画編集します。
これとは別に、イベントの告知と参加登録用のページが必要です。プレミアムコンテンツ用の購入ストアの準備、購入者向けの会員サイトも用意しなければいけません。
また、会員サイト内もインタビュー動画に加えて、特典としての講義ノートや文字起こしも同時進行で作成していきます。
そしてイベント当日用の配信ページも必要です。同時に、登録者への告知や参加のお誘いにメール配信をしていきます。
ジャストインタイムで知識と期限をシンクロさせる
これらは、それぞれの期限で完了されていきます。
しかし最後の「イベント開催日」と言う期限に間に合わせるためには、それぞれが同時進行で、開催日までに完結するように動いていかなければいけませんでした。
このためには、それぞれのサブプロジェクトに必要な情報を、すぐに使える場所にあらかじめ用意します。
あるいは、必要に応じて探してきてサブプロジェクトに追加して、その場で使えるように同時進行していきます。
このように「ジャストインタイムでプロジェクトが進行していくフレームワーク」が必要だということです。
3. アジャイルなプロジェクト管理と80:20(パレートの法則)
そして3番目に「アジャイル」と「80:20の法則」です。80:20の法則はパレートの法則とも呼ばれます。(これはDX時代のプロジェクト管理では、特に必要となる考え方です。)
実はこれ、アジャイルやスクラムといったプログラム、あるいはシステムを開発するときの大型のプロジェクトから派生しているプロジェクト管理の手法にも使われています。
これを個人のプロジェクト管理にも修正して活用します。
アジャイルやスクラムでは、多くの場合には、7人から10人程度の小さなチームを作り、その中で1カ月単位、あるいは1週間単位のような小さなサブプロジェクトにして開発していきます。
それぞれのチームメンバーである開発者が担当したタスクを進めていきます。これを同時進行でチームが一体感を維持しながら短い単位のサイクルでプログラムを開発していくのです。
これは、一般的なビジネスの製品開発、DXの導入、ビジネスモデルの変革などでも使われるようになってきています。読者の中にも、このアジャイル開発の手法を使ったプロジェクトに関わったことがあるかもしれません。
この中で使われているさまざまな原理、原則、あるいはツール、考え方などを個人のプロジェクト管理でも使うことができます。
アジャイル開発とトヨタのジャストインタイムの考え方
アジャイル開発やスクラムといったプログラム開発手法は、もともと日本の製造業、特にトヨタのカンバン方式やジャストインタイムの影響を強く受けた考え方です。
これがGAFAMなどをはじめとする企業で採用され、急速に広まりました。日本の失われた30年は、この期間とちょうど重なります。これが日本にも逆輸入され広まりつつあります。
本家本元のトヨタでも、2021年の水素エンジンプロジェクトの鈴鹿レースで採用していると公表されました。
なぜトヨタは水素エンジンでレースに出たのか。激闘の24時間に密着取材 | トヨタイムズ)
第2の脳: ナレッジブレインもこのアジャイルの影響を強く受けています。
80:20のアプローチを個人のプロジェクト管理に使う
アジャイルなプロジェクトとはどういうことかというと、一番わかりやすいのは80:20のアプローチです。
これはよく、全体の20%が80%の売上を占めるというような表現で説明されます。
アジャイルの基本的な考え方は、どのような大きなプロジェクトであれ、小さなチームで細切れにした小さなサブプロジェクトを短期間で進めていく。
それぞれのサブプログラムの最後にはプロトタイプを作って顧客に評価してもらい、それを修正しながら次のサブプロジェクトへと繰り返し、大きなプロジェクトを完結するというものです。
つまり、プロジェクト全体を最初に全てプランするのではなく、最も重要な20%を細切れにして、仮のプロトタイプを完成させていく。それを評価して、次のサブプロジェクトを開始する。この繰り返しです。
80:20のアプローチの最大の利点
プロジェクトの最初に、いろんな欲しい機能であったりとか、あるいは執筆活動であれば記事のリストであるとか、あるいはキーワードのリストですとかというものがプロジェクトで要求されていたとします。
すべてに手をつけ、100%の全体的な大きなプロジェクトにしていくのではなく、まずは全体の20%の重要な部分だけにフォーカスして、その20%にすべてのリソースを集中していくということですね。
そして、これをより短い期間でより小さなプロジェクトで1週間とかといった単位でアウトプットをしていく。そして、プロトタイプのようなもの、あるいは中間の完成物を作って、実際、それが動くかどうかを試してみる。そしてお客さんの反応をうかがう。
お客さんとディスカッションをして、それがどうかと確認をして、そこから次の展開を進めていく。必要なものをより強化して、必要でないものは捨てていく。
この繰り返しで、残りの80%の部分で残っていったものが本当に必要かどうかがより明確になってきます。
どうしても必要なもの、重要なもの、あるいはあった方が良いものなどに分けるとすれば、その多くが不必要なことがどんどんと明らかになってきます。
そうすることによって、お客さんが求めている最も重要な部分、重要な問題を解決するところに、より早く行き着くことができる。
さらには、不必要なことをすることが自然と省かれ、プロジェクト全体がより短いコンパクトなものにすることができるという考え方でもあります。
これが80:20のアプローチの最大の利点とも言えます。
ですので、20%にフォーカスをして始める。そして、より小さなプロジェクトにして、同時進行するプロトタイプを小さなサイクルで回していく。それをテストして開発を進めるというアプローチが、特にDX時代のプロジェクト管理では必要になります。
参考: 情報過多の時代は「知識アプリX習慣」で人生が変わる(新しいブラウザータブで開く)
個人のプロジェクト管理を2倍速化する
私自身もこの音声配信プロジェクトの中で、より小さなコンパクトなものにしてアウトプットを重ねていきました。
お客さんからは、完全でないものが出てきたことに対して、クレームがつくこともありました。
しかし、より重要なポイントは、全体を時間をかけて完全なものにするよりも、お客さんが求める本当のニーズにマッチしたものを最短のスピードで完成させることです。
完全に近づけていくためのステップを、小さな期間で小さな目標にして、高速で積み重ねていく、素早く展開していくということが重要になります。
この結果として、本来90日のプロジェクトというものを45日で終えることができました。
これまで、PDCAと呼ばれるようなプロジェクト管理、あるいはウォーターフォールと呼ばれる、まずは時間をかけて全体を管理するアプローチが主流でした。
DXやデジタル化で世の中が急速に変化している今、全体から管理していくアプローチが機能しなくなってきています。
DX時代のプロジェクト管理では、こういったより細切れにした、より「アジャイル」で「ジャストインタイム」なプロジェクト管理が「個人のプロジェクト管理」でも必要となってきています。
参考: 10倍の読書力と文章力 がやってくる。今、そこにある未来。(新しいブラウザータブで開く)
プロジェクト管理: 知識管理がもたらす最大の利点
そして、ここから生まれてくる別な副産物としては、このプロセスで作られた仕掛品(WIP)、途中経過の知識、あるいは完成品が知識ベースとなって蓄積されていくということです。
これが経験値となり、次のアウトプットのための資産となっていきます。
これが、今回の「2倍速のプロジェクト管理」というものの大きな流れです。
こういった知識管理(ナレッジマネージメント)とプロジェクト管理を同時進行させることにより、高速かつ効率的なプロジェクト管理が可能になるというお話でした。
今回のお話はここまで。
次回の配信をお楽しみに、とにかく明るいやまけんがお届けする人生後半戦のハーフタイムでした。
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