Last Updated on 2022年6月12日 by 大山賢太郎
特別著者インタビュー: 「橋の上で踊れ」の著者 奥田桃子 さんに聞く 今回は特別著者インタビューと題して、漫画家の奥田桃子さんにお話を聞きたいと思います。
1994年集英社でデビュー。当時、美術系大の油絵科に籍を置いており2足のわらじで生活していた。得意とするのは50P、100Pなどの長編よみきり。アシスタントを入れないのがポリシー。映画と本とパグ犬を愛するインドア派である。
奥田さんは、1994年集英社でデビュー。当時、美術系大の油絵科に籍を置いており2足のわらじで生活をしていました。
大山:
まず最初に、奥田さんの簡単な自己紹介からお願いします。
奥田:
東海地方のとある街で生をうけました。四人家族の次女。絵を描くのが大好きなのは日本画家をしていた祖母の血です。両親は共に体育会系なのですがわたしはスポーツがてんでダメ、という超文系娘でした。
そのわりに、中高と運動部に所属していました。理由は文化部に入ると運動不足で太ると思ったからです。
幼少期は紙と鉛筆さえ与えておけば何時間でも黙って描き続ける「手のかからない子」と言われ、小学生に上がると、自分のオリジナルキャラクターのストーリーものをノートに描いてました。
でも児童文学を読むほうが好きだったので、実際に少女漫画誌と出会うのは10歳、と遅い方でしたね。
大山:
「1994年集英 社でデビュー。当時、美術系大の油絵科に籍を置いており2足のわらじで生活していた。」ということですが、どうして漫画になる決心をしたんですか?
奥田:
これは、新人賞の応募時期がちょうど夏休みに当たっていたんですよ。その年、あまりに夏季休暇がヒマだったので描いてみようかなー…と軽い気持ちで。
用紙もペンも画材らしいものも特になく、中学のとき誕生日プレゼントでもらった『マンガ入門キット』みたいなもので投稿作を描きました。
その雑誌が創刊間もなかったので、雑誌のカラーが決まる前に投稿してしまえ!的な思いもあったと思います。
正直、デビュー作の原稿を描くまでまともに作品をひとつ仕上げるとか、したことがなかったんですね。同人誌をやってたわけでもないし他誌への投稿歴もない。つまり初投稿…本当によくあんな拙いものが通ったなと…。
大山:
二足のわらじということですが、当時のお話をもう少し聞かせていただけますか?
奥田:
油絵科のなかでマンガ描いてるやつなんてわたしひとりしかいなかったので、かなり浮いた存在だったのでは(苦笑)。
初めはマンガよみきり短編の基本である32Pとかを描いていたのですが、42→48→60→100Pと、順調に依頼が来るようになりました。
でも今も感謝しているのは担当さんが奥田の学業のペースにあわせて仕事をある程度セーブしてくださっていたことです。でも一度だけ、春休みまるまる使って100Pものに取り掛からねばならないときがあり、ストーリーづくりにひと月、原稿にひと月…休みつぶれたことがありましたね。
大学で3,4年生になると広いアトリエをもらえるのですが、そこの大きな作業机で原稿描いてました(笑)
普通に飲食店などでアルバイトもしていましたが、マンガがコンスタントに載るようになってきたので1本にしぼることにしたんです。
ただ学校の課題では、ものを見る目が立体や面というよりどうしても「線」で捉えてしまうくせがついてしまいあまりいい点がとれませんでした…。
大山:
「橋の上で踊れ」を書くきっかけというか、どんな背景があってこの題材が決まったのですか?
奥田:
執筆当時、東京都葛飾区に住んでいました。14階建てのマンションからいつも荒川をながめたり散歩をしていて、そこで暮らす人々の空気感みたいなもの、あとその頃の高校生のリアルを描けたらなという感じだったと思います。
あと作品中に出てくるキーとなるファッション誌が、わかる方にはわかるものなんですが、わたしが愛読書にしていたことも大きく影響しています。
大山:
「橋の上で踊れ」とはどんな漫画で すか?どんな点に苦労しましたか?
奥田:
服飾デザインへの夢に目を輝かせた高校生・正午とその彼女・美砂、家庭科講師・弓香とその夫・治。この4人が織りなす夢追い系ラブストーリーです。
描きたかったのは「フランクすぎて教師らしくない教師」、「勉強より目の前の自分の夢、な生徒」そんな二人の、恋愛に行きそうで行かないギリギリのライン。
発表時、担当さんはなんとかこの二人のラブストーリーとして売り出そうとしていたらしいのですが…元のサヤにおさまるハッピーエンドになっています。あ、ネタバレですねコレ!?
苦労した点はアシスタントを全く入れなかったためかつてないツラさの100P制作でありました。〆切前はもう寝不足で、優しい音楽しか聴けないという脳みそ…ふらんふらんでした。背景もトーン貼りもベタ塗りも全部自分でやってたので。
ネームというかコマ割やセリフなどのラフの段階でも初め、130Pぐらい描いてしまって、削るのに悩みましたね。
でも不思議なことにこの作品についてはふり返るといい思い出しか出てきません。ちなみに、描く前に二つの学校に取材をさせていただいたのと、服飾系学生の方にも話をいろいろ伺いました。
大山:
今回、初めてのキャンペーンということですが、どんな点に配慮していますか?
奥田:
SNSをうまく使って拡散できたらなと、それに尽きると思います。本当に、0円販売でまったく構わないんですよ、
少しでも奥田作品への入口になってもらえればと切に願うので。Kindle 無料コミックの中でのランキングがちょっとずつ上がっていくのも楽しみですね。
大山:
「橋の上で踊れ」以外に、どんな漫画がありますか?
奥田:
書籍名と簡単な説明 : 単行本『青すぎる春』(集英社クイーンズコミックス・絶版)、これは自身で一番力を入れたと言うか…逆に入れすぎてそのあと燃え尽きてしまったような1冊です。
奥田のエッセンス満載、とでも言いますか。哲学っぽかったり、純愛ものだったり。Kindle化ももちろんされていますのでぜひご一読いただければと思っています。
インタビュー後記:
さまざまな経験をして、この「橋の上で踊れ」が誕生したのがよく分かりました。人生の一コマを彩る経験とその決勝がこの作品になっていることがよく分かりました。一人一人の著者と作品には、それぞれのストーリーがあります。奥田さんの場合も、ものすごいエネルギーとその時の人生が煮詰まっているのですね。
この「橋の上で踊れ」ですが、ゴールデンウィークの最終日5月6日(水)午後12時まで無料です。是非、この機会にダウンロードして、時間がある時にじっくりとお読み下さい。
奥田桃子
ツイッターアカウント=@hafhaf_
https://twitter.com/hafhaf_
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